自動車メーカーがレースに参戦する意義とは? 参戦理由を紐解いた
レースは走る実験室
「レースは走る実験室なんですよ」と、自動車メーカーの技術者からはそんなコメントを聞くことがあります。レーシングマシンと市販乗用車はまったく別の乗り物だと誤解する人もいますが、実は密接な関係があるのです。

「24時間レースで壊れないクルマに仕上げてから市販することにしています」
レクサスのスポーツカー開発者は、マシンを鍛えるためにレースに参戦しているといいます。24時間を休むことなく走り続けられるマシンを開発すれば、何十万キロ走っても、何年も乗り続けても壊れない、耐久性の高い乗用車ができあがるというわけです。
「サーキットの24時間は、1年間かけて世界の道を走り回ったに等しいデータが得られるのです」と、レース参戦の意義を、そう語る技術者もいます。
家族7人を乗せて走るミニバンも、プロのドライバーが300km/hで駆け抜けるレーシングマシンも、技術的には共通しているのです。素晴らしいクルマを開発するのに必要な技術は、サーキットを走ることで磨いているわけです。
第二の理由は、宣伝効果です。いま説明しましたように、レースでは市販車に必要なノウハウであり技術が磨かれます。つまり、勝つことは自動車メーカーの技術力の高さの証明でもあるのです。
華やかなレースで勝てばそれがテレビにたくさん映り、雑誌や新聞に取り上げられます。みなさまのスマホなどを経由してSNS等で拡散されることもあるでしょう。それによって自動車メーカーの技術力の高さが世の中に伝わり、イメージも良くなります。
自動車メーカーのレースに参戦するための資金は、実は宣伝を担当する部署の予算から捻出されることもあるそうです。
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Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。