なぜ新車の人気は背高クルマに集中? 高齢化社会も原因?
この20年ほどの間、日本車の売れ筋は全高が1600mmを超える背の高い車種になっています。セダンやステーションワゴンといったひと昔前の人気カテゴリーはかなりの数が姿を消してしまいました。多人数乗車のミニバンだけではなく背の高いクルマ需要、どうして増えたのでしょうか?
1990年中盤から増え始めた日本の背高クルマ
この20年ほどの間、日本車の売れ筋は全高が1600mmを超える背の高い車種になっています。セダンやステーションワゴンといったひと昔前の人気カテゴリーはかなりの数が姿を消してしまいました。今ではミニバン、SUV、さらには軽自動車でも背が高いクルマに人気が集まっています。
多人数乗車のミニバンだけではなく背の高いクルマ需要、どうして増えたのでしょうか?
1990年代の中盤から、多人数乗車の可能なミニバンが目立って増えてきました。1994年に初代ホンダ「オデッセイ」、1996年には初代ホンダ「ステップワゴン」、トヨタ「タウン&ライトエースノア」、さらに日産からも「ラルゴハイウェイスター」などが発売され、売れ行きを伸ばしました。
これと併せて軽自動車の分野でも、初代スズキ「ワゴンR」が1993年に発売されてヒット作になりました。その後も20年以上にわたって、背の高いクルマが販売ランキングの上位を占めています。
今では新車として売られるクルマの35%以上が軽自動車になり、この内の75%は全高が1600mmを上まわる背の高い車種です。小型/普通車についても、販売ランキングの上位には、日産「セレナ」、トヨタ「ヴォクシー」、トヨタ「シエンタ」、ホンダ「フリード」といった背の高い3列シートのミニバンが数多く入ります。
さらにトヨタ「C-HR」、マツダ「CX-5」、ホンダ「ヴェゼル」といったSUV、トヨタ「ルーミー&タンク」やスズキ「ソリオ」のようなコンパクトカーも、背が高い人気車になります。
この流れを時系列で見ると、1990年代の中盤からミニバンが増えて、これに刺激されて背の高いSUVやコンパクトカーが多くなったように受け取られます。
背の高い車種が人気を得た背景には、夜間走行における眩しさもあるでしょう。背の低いセダンやハッチバックを運転していて、背後からミニバンが迫ってくると、夜間ではヘッドランプの光が眩しく感じます。ミニバンのヘッドランプの取り付け位置はセダンよりも高く、ちょうどルームミラーのあたりになるから眩しいのです。またミニバンには昼間でも圧迫感が生じます。
このあたりを最近になって売れ行きを伸ばした国産SUVの開発者に尋ねると「今のクルマには、いろいろな意味で背の高さが必要です」と言います。
さらに「最近はミニバンを筆頭に背の高いクルマが増えて、従来のセダンやワゴンでは、周囲の車両に埋もれた感覚になります。遠方が良く見えず、ドライバーや乗員は不安を感じます。夜間のドライブでは、後方を走るミニバンのヘッドランプがルームミラーに反射して、眩しく感じることも多いです。
その点でSUVなら座る位置と視線が高まるので、周囲をミニバンが走っていても埋もれた感覚になりにくいです。夜間ドライブでも眩しくありません。また最近は高齢のお客様が増えて、乗り降りのしやすさが重視されます。SUVは座る位置がセダンやワゴンに比べると少し高いので、腰の上下移動量が少なく、乗り降りがしやすいことも特徴です。SUVが増えた背景には、背の高いミニバンの増加、お客様の高齢化など、今の時代の流れがあるといえると思います」