6速MTで230万円台! トヨタの「スポーツコンパクト」がスゴかった! 6点式ベルト付きの「ガチガチ」仕様!? 専用サスもついてる「ヤリス カップカー」は“公認チューンドカー”だった

モータースポーツ参戦を前提としたスポーツコンパクトモデルがトヨタから発売されています。6速MTのみの設定で、専用サスペンションや6点式シートベルト、ロールケージなどを備えながら230万円台という驚きの仕様について紹介します。

スポーツ走行入門にも最適な「ヤリス カップカー」とは

 ロールケージや専用サスペンションを組み込んだ“ガチ”のサーキット仕様ながらも、価格は230万円台というリーズナブルなモータースポーツ用ベース車が、トヨタから発売されています。
 
 一体どのようなクルマなのでしょうか。

シブいブラック仕上げがむしろイイ! トヨタの“公認チューンドカー”「ヤリス カップカー」とは
シブいブラック仕上げがむしろイイ! トヨタの“公認チューンドカー”「ヤリス カップカー」とは

 モータースポーツのひとつ「ワンメイクレース」は、同じ性能・装備で揃えた同一モデルのみで行うレースです。

 車種によってはリーズナブルかつ気軽にモータースポーツを始めることも可能なため、モータースポーツ入門、もしくは社会人が「週末レーサー」に変身できる場所として人気があります。

 中でもトヨタ「ヤリス」、トヨタ「GR86」およびスバル「BRZ」、マツダ「ロードスター」は、それぞれ参戦用にナンバープレート付きのワンメイクレース用グレードの「カップカー」「GR86/BRZ カップカー・ベーシック」「NR-A」を設定し、「ヤリスカップ」「GR86/BRZカップ」「ロードスターパーティレースIII」などのJAF公認レースを日本各地で開催しています。

 これらのレース用グレードは、購入時点でサーキット走行が可能な装備をいくつか有しているだけでなく、ナンバープレート付きのためサーキットに自走できるほか、レースカーを日常生活で使用できるのも人気のポイントです。

 中でも最も身近な存在といえるのが、「ヤリス カップカー」です。

 搭載される1.5リッター「M15A-FKS」型 直列3気筒エンジンは、一般モデルと同じく最高出力は120ps(88kW)で、特別なチューニングは施されていないものの、水冷式エンジンオイルクーラーを追加しています。

 トランスミッションは6速マニュアルのみで、ギア比を含めこちらもノーマルと同じです(以前はCVTも用意されていました)。

 足回りには専用設計のサスペンションキットを装備。全高も15mmダウンしています。

 ショックアプソーバーはリア側に14段の減衰調整が可能なダイヤルを持ち、セッティングの変更を可能としています。

 ワンメイクレースのため、ヤリスカップではサスペンション類を交換することは許されていません。

 外観上ではホイールキャップを持たない「黒“鉄チン”」(スチールホイール)と、前述の通り15mm下がっている程度しかノーマル車との差異はなし。

 ワイドフェンダーで全高も低い3ドアの「GRヤリス」のような「いかにも速そう」な見た目ではないのも特徴といえます。

 標準装着タイヤも、ヤリスの中で一番細い175/70R14サイズ。ホイールとタイヤが質素なのは、参戦時には換装することが前提ゆえです。

 レース時のタイヤは、グッドイヤーの「EAGLE RS SPORT S-SPEC 195/55R15」が指定されています。

 ブレーキは、フロントがディスク、リアはドラムブレーキでこちらもノーマル状態。レース時に交換可能なのはパッドのみです。

 車内に目を向けると、専用設計のロールケージが張り巡らされています。

 このロールケージはインパネ非貫通式で基本構造6点と運転席・助手席にサイドバーを有し、JAF国内競技車両規則「スピードB」および「スピードSA」に適合する本格的なものです。

 購入時にはバケットシートは付属しないので、レース参戦時には運転席シートの交換は必須ですが、サベルト製6点式シートベルトと取付用アンカーは標準装備されています。

 乗車定員は5名のままで変更はないため、ノーマルのヤリスのように後席に人を乗せることもできます。

 また日常でも使う「マイレースカー」のため、ロールケージ部分をカットした専用フロアマットを装備しているのは、地味に嬉しいところです。

 ステアリングホイールもノーマルと同じ形状で、材質はウレタン製で、こちらも交換は不可。

 エアコンは備わるもののマニュアル式で、オーディオも未装着。スピーカーは2個装着済みですが、オーディオ接続用ハーネスの配線はありません。

 オーディオやカーナビを取り付けたい場合は、設置用クラスターとハーネスが付属する「ナビレディパッケージ」を選ぶ必要があります。

 ヤリスは安全装備が充実しており、カップカーでもSRSエアバッグのほか、先進運転支援機能「トヨタセーフティセンス」、クリアランスソナーなどを標準で備えますが、これらを外すことはできません。

 このほかにもレース用アイテムとして、サーキット走行に必要な前後の牽引ブラケットであるフロントトランスポートストラップ/リアトランスポートフックも標準装備しています。

 ヤリスカップカーを購入後、レースに出るためにはいくつか装備を揃えなければなりませんが、それでもここまで準備が整った状態で、新車価格(消費税込み、以下同)234万7400円(2025年3月現在/北海道除く)で手に入れることができるのはちょっとした驚き。

 ヤリスカップカーのベースを1.5リッターの最廉価版「X」のガソリン車 1.5リッター(6MT・2WD)とした場合、その価格は169万円9500円なので、ヤリスカップカーとの価格差は64万円7900円となります。

 レース用サスペンションキット+6点式ロールケージ+サベルト製6点式シートベルトなどを後から用意すれば、それなりの金額となること、開発・生産をトヨタカスタマイジング&ディベロップメントが担当する「純正レースカー」であることなどを鑑みると、その差額は決して高くないように思います。

※ ※ ※

 ワンメイクレース用のレースカーであるヤリスカップカーは、レース装備を持った「公認チューニングカー」とも言えるほどの内容を誇ります。

 ということは、本来の目的であるサーキットデビューだけでなく、ヤリスカップカーをベースに硬派な「ホットハッチ」に仕立てて走りを楽しむこともできるでしょう。

 リーズナブルなスポーツコンパクトモデルという意外な選択肢となりうるのかもしれません。

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Writer: 遠藤イヅル

1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。

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