スバル「“スゴい”スポーツセダン」登場! 計算された“300馬力”の意図は? めちゃ速いのに室内が超快適なワケとは? 「S210」についてSTI本部長に聞いてみた!
S210に込められた“こだわり”とは
STIがこだわる“クルマを意のままに操れる操縦性”の実現には、ハンドリングも重要なポイントです。

当然、エンジンの出力が向上しているため、タイヤを少しワイド化しました。具体的には、量産車が245/40R18に対し、S210では255/35R19を採用。さらに、ミシュラン・パイロットスポーツ4Sという、非常にスポーティで限界性能の高いタイヤを装着しました。また、ホイール幅も8.5Jから9Jに拡大されています。
そうなると、タイヤは従来より外側に張り出すことになります。それをカバーするために、フロントフェンダー部のスポーツサイドガーニッシュを、このクルマ専用に新たに開発しました。
その形状を見ると、少しリップが付いています。これもニュルブルクリンクのレースカー由来の造形で、「これによってホイールハウス内の圧力を抑え、リフトをできるだけ低減する効果があります」と高津さん。
また、AWDに関しても改良が施されています。「ノーマルモードからスポーツモードに切り替えると、ターンイン時のセンターデフの拘束を緩める制御を入れました。そうすることで、ステアリングの切り始めの応答が大幅に向上しています」とのこと。
特に顕著に感じられるのは雪上での挙動だそうです。
「ノーマルでは、少しステアリングを切ってから遅れてクルマの姿勢が変わります。そのため、目指したいラインを走ろうとすると、どうしても舵角を増やさなければなりません。すると、コーナーの出口では、それなりのカウンターステアが必要になることもあります。
しかし、スポーツモードを選ぶと、明らかに舵角が減り、より自然な操作でラインをトレースできるようになっています」と説明してくれました。
最後に、高津さんのこだわりについてうかがいました。
ひとつは、シートだそうです。
「これまでもレカロのシートは採用していましたが、今回はカーボンバックレストを採用した、非常にホールド性が高く剛性の高いフロントシートを新開発しました。
シートは、操縦性を語る上でとても重要な要素です。ですから、シートには絶対に妥協しませんでした。意外とスパルタンな見栄えですが、実際にはものすごく快適です。座り心地がよく、長距離移動も非常に楽になるシートに仕上がりました」と語ります。
そして、このS210のプロトタイプについて、「パフォーマンスのために何かを犠牲にすることはしませんでした。ですから、もともと搭載されているアイサイトXも維持しています。
つまり、ベースモデルが持っている良さはそのままにしつつ、さらにパフォーマンスを高めたのが、このS210のプロトタイプなのです」と説明しました。
耐久レースでは、ドライバーの疲労が大きな問題になります。その経験を踏まえながら開発されたS210は、まさにレース由来のスポーツカーでありながら、同時にグランドツアラーとしての快適性も兼ね備えた1台に仕上がっているようです。