クルマの見た目も左右? 新車装着タイヤが大径化する理由とは
数年前なら普通車では15~16インチサイズが主流でしたが、今では新車時から20インチという大径タイヤ装着車も現れました。ここまでの大径タイヤ/ホイールは見た目重視のカスタマイズが主流でしたが、新車装着時からなぜ、ここまで大径化したのでしょうか?
クルマを支える重要パーツである「タイヤ」が“大きく”進化?
その昔、「タイヤはハガキ4枚の大きさでクルマを支えています」というテレビCMがありました。クルマが唯一路面と接する大事な機能部品であることを、実に分かりやすく教えてくれたのです。
タイヤは荷重を“支える”、駆動力・制動力を“伝える”、路面からの衝撃を“和らげる”、方向を“転換・維持”の機能を持つ「重要保安部品」です。
クルマを構成する部品の多くは精度を高めることで性能向上に寄与する物が多いのですが、ゴム製品であるタイヤは走行中に絶えず変形している上に、新品時と摩耗時ではミリ単位でサイズも変化していきます。そんな中で安定した性能を発揮させるためには、各タイヤメーカーの技術とノウハウが重要になってくるのです。
そんなタイヤですが、新型車での採用サイズが以前よりも大径化されています。
昔は軽自動車が10~12インチ、普通車も13~15インチくらいが主流だったのですが、現在は軽自動車が13~15インチ、普通車が15~18インチが主流で、高性能モデルは19~20インチというモデルも数多くなっています。
一昔前ならタイヤ/ホイールの大径化するのは見た目重視のカスタマイズが主流でしたが、新車時からなぜ、ここまで大径化したのでしょうか?
その理由は様々ありますが、元々は機能面のためで「止まる性能」を引き上げるためです。近年では、クルマの高性能化に加えて衝突安全性向上のために大きく重くなったボディを確実に止めるためにブレーキも高性能化されています。
ブレーキは「運動エネルギーを熱エネルギーに変換」→「急激な温度上昇を防ぐにはブレーキ側の熱容量を増やす」→「ブレーキのサイズが大きくなる」→「それを収めるタイヤ/ホイールは必然的に大きくなる」というわけなのです。
大径化のもう一つのメリットが「走行性能」です。
タイヤ/ホイールの大径化によりタイヤの直径は大きくなりますが、収めるタイヤハウスのサイズは決まっているので、結果的にタイヤ自体は薄くなります(タイヤの断面幅に対する断面の高さの比率(=偏平率)が低くなる)。
一般的にはゴム部分が薄いとたわみやよじれが少なくなることで走行性能が上がります。一方、路面のショックが大きくなるので乗り心地は悪化するのですが、最新のタイヤは様々な技術革新によって、そのデメリットは最小限に抑えられています。
さらに最近では、視覚的な面で採用されることも多くなっています。それはクルマ自体の「カッコよさ」の追求からくるものです。
自動車専門誌などで新車が出た時にデザイナーのスケッチが掲載されることがありますが、そのスケッチを見るとカッコよく見せるため、タイヤ/ホイールは大きく描かれている事がほとんど。当然、運動性能や快適性、取り回し性をバランスよく成立させるため、市販時にはこれまでの小径な適正サイズに落ち着いていました。しかし、タイヤやサスペンション、ステアリングシステムなどの進化によって、最近の新型車では大径タイヤを履いても各性能が十分に成立できるようになったのです。