しなくて良くなった? やっぱり必要? 新車納車後の「ならし運転」
高性能スポーツカー「GT-R」はならし運転が必要!?
しかしその一方で、日本を代表するスポーツモデル日産GT-Rの取り扱い説明書にはこのような記載があります。
「日産GT-Rは高精度な部品を使用しており、その性能を発揮するためには、新車から一定期間のならし運転が効果的です。新車からの走行距離が2000kmに到達するまで、適切なならし運転を行なうことで、部品のすり合わせが行なわれ、日産GT-R本来の高性能を長年に渡りお楽しみいただけます」
ここでのポイントは「ならし運転が効果的」、「本来の高性能を長年に渡りお楽しみいただけます」という記述です。
それを踏まえて、筆者(山本シンヤ)である私は、今でも「ならし運転」は必要だと考えます。つまり、ならし運転を行なったクルマとそうでないクルマの差は、新車時には差がなくても、距離を重ねていけばいくほど大きな差となります(もちろん適切なメンテナンスが前提)。
クルマに搭載されるエンジンはもちろんですが、より複雑な機構になりつつあるトランスミッションはその差が大きいのです。同じ距離を走っているにも関わらずシフトアップ/ダウンの変速ショックや滑らかさが大きく異なることもあるようです。
また、タイヤとボディを支えるサスペンションは、ショックアブソーバーやブッシュの馴染みなどから「本来の性能は1万kmを超えたくらいから」と言われることもあります。
新型車のインプレッション記事の中で「サスペンションの動きが渋い」と言う記載を見かけたりしますが、これは設計上の問題だけでなく、サスペンション(特にショックアブソーバーやブッシュ)などが馴染んでいないことが原因となっていることが多いようです。
筆者は実際にあるクルマの新車時と1万km走行時の同型車を同条件で乗り比べた際の印象が全然違った事や、長距離ツーリングに出かけた際、距離が進むにつれてクルマの印象がよくなっていたことも経験しています。
ちなみにならし運転は中古車でも行なったほうがいいです。これは各部品の馴染みを付けるというより、前オーナーの癖を取る事が目的になるのですが、意外と効果があります。
このような事を踏まえると、昔のように入念な「ならし運転」をする必要はありませんが、“やるに越したことはない”のが、ならし運転です。人もクルマも最初が肝心だと思います。
【了】
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。