ホンダのオートバイ最上級モデル「ゴールドウイング」の歴史を振り返る
ホンダのオートバイ、その最上級モデルが「ゴールドウイング」です。1975年に初代「GOLD WING GL1000」が発売されて以来、熟成と進化を繰り返しつつアメリカやヨーロッパを中心に長距離ツーリングバイクとしてステータスを創り上げてきました。今回はその歴史を振り返ります。
欧米メーカーを相手に成長を続けたゴールドウイング
「GOLD WING」という名のオートバイが最初に登場したのは1974年10月のことでした。ドイツ・ケルンで開催されたバイク展示会にその姿があり、オートバイには珍しい水平対向4気筒エンジンで注目を集めたのです。
ホンダは、1975年に初代「GOLD WING GL1000」が発売された当時、欧米の巨大市場でヒットを狙い、日本製バイクにしては超大型とも言える排気量1000ccのエンジンを新開発したのでした。
「GOLD WING GL1000」は、通常燃料タンクはエンジンの上に配置しますが、これをシート下に移設し、運動性能を高めるレイアウトにしたのも話題を呼びます。この頃からホンダは新しい技術を積極的に独自開発し、ハーレーやBMWといった大排気量バイクが人気だったカテゴリーに挑んだのです。ハイパワーと軽快な走りによりレースで活躍することがバイクファンの心を掴む一方、広大な土地を有するアメリカでは、大陸横断の旅を可能とする大きなオートバイも古くから好まれ、いかに長距離を快適に走ることができるかという点が重要視されてきました。
ゴールドウイングはそんなグランドツアラーと呼ばれるジャンルに投入され、改良を重ねていきます。
ちなみにその頃の日本は「ナナハン=750ccまで」のオートバイしか発売されておらず、1000ccのオートバイなどは超高級品。一部ファンだけのものだったことも付け加えておきます。
1980年にはエンジンの排気量を上げて「GOLD WING GL1100」となり、生産拠点を国内ではなくアメリカでおこなうようになりました。
1984年には「GOLD WING GL1200」へと進化し、88年には水平対向エンジンを4気筒から6気筒化した「GOLD WING GL1500」が登場します。
カウルと呼ばれる、走行風からライダーを守る外装パーツもこのとき一気に大きく豪華になり、グランドツアラーとしての能力を飛躍的に向上していきます。このときから日本でも限定販売として少しずつ売られるようになり、88年は500台限定、89年は700台、限定販売がその後も続きます。時代はバブル期を迎えつつあり、ゴールドウイングのような高級オートバイを求める声が国内でもあがってきました。
2001年には1832ccまで排気量が拡大され、グランドツアラーとしての地位を確固たるものとしていきます。
車体の骨格となるメインフレームは、エンジン自体をフレームの強度メンバーとして組み込む「マルチボックスセクション式アルミ製ツインチューブフレーム」となり、ブレーキはレバーかペダルのどちらか一方を操作すれば、前後輪のブレーキが適切な制動配分で作動する「デュアル・コンバインド・ブレーキシステム(Dual CBS)」という前後輪連動式にグレードアップします。
従来のハロゲン式ライトに比べて約2倍の明るさを誇るディスチャージヘッドライト、間欠機能付きワイパー、キーにチップを内蔵して信号が合致しない限りエンジンが始動しないセキュリティーシステム、6連奏CDチェンジャーのオーディオなど、それまでのオートバイにはなかった先進技術を満載にしたモデルでした。