ホンダの「自動運転タクシーサービス」に衝撃! GMが自動運転専用車の開発凍結を発表!? 26年開始はどうなる?
ホンダとアメリカのゼネラルモーターズ(GM)、そしてGMが出資するベンチャー企業のクルーズの3社が共同開発してきた、完全無人の自動運転専用車両「クルーズ・オリジン」について、GMが無期限で開発中止すると発表しました。
〜2026年初頭開始予定、ホンダの完全自動運転サービス、軌道修正が必須〜
ホンダが2026年初頭に東京都心部でサービスを開始する予定の完全自動運転サービスが、大きく方向転換せざるを得ない状況となりました。
なぜそのような状況になったのでしょうか。
それは、ホンダとアメリカのゼネラルモーターズ(GM)、そしてGMが出資するベンチャー企業のクルーズの3社が共同開発してきた、完全無人の自動運転専用車両「クルーズ・オリジン」について、GMが無期限で開発中止すると発表したからです。
アメリカ現地時間7月23日、GMのマリー・バーラCEOが明らかにしました。
理由については、米運輸省の道路交通安全局からアメリカ国内でのサービス開始に対する許可が下りる目処が立たないからだとしています。
今後は、これまで運用しているコンパクトカーGMシボレー「ボルト」をベースとした自動運転車による技術やサービスのレベルアップを目指すとしています。
なお、完全自動運転とはドライバーが車内にいない自動運転レベル4を指します。
このGM発表に対してホンダに問い合わせたところ、以下の回答がありました。
「クルーズ・オリジンの生産凍結の影響は精査中。
ホンダとしてはできるだけ早期に日本での自動運転タクシーサービスを開始したいと考えている」
なお、本件については現時点で、ホンダからプレスリリースはありません。
ホンダがいう「影響」はとても大きいと言わざるを得ません。
なぜならば、ホンダは報道発表や、自社メディア「ホンダストーリーズ」の中で、2026年初頭の東京都心でのサービス開始では「クルーズ・オリジン」を前提としていると明記してきたからです。
そのため、2023年のジャパン・モビリティ・ショーや、東京都が主催するイベントなどに「クルーズ・オリジン」のプロトタイプを展示。
来場者に車内に座ってもらいながら、ホンダの開発担当者らが直接、同車の持つ魅力や未来の社会に向けた完全自動運転の可能性について説明してきました。
けっして遠い未来の話ではなく、2026年初頭というすぐ目の前にやってくる新しい技術と新しい社会のあり方を提唱するものでした。
テレビやネットを通じて「クルーズ・オリジン」実用化によって、自動運転の本格普及期がやってくるといった報道が広まったところです。
その「クルーズ・オリジン」の生産計画が凍結されたのです。
完全自動運転に対する近未来の夢を語ってきた「クルーズ・オリジン」の共同開発社であるホンダとして、ユーザー、販売店、地方自治体、交通事業者、報道関係者などに対して「なぜ、クルーズ・オリジンは実現できないのか?」をしっかり説明することが求められます。
さもなければ、日本が国をあげて全国各地で社会実装を加速させようとしている、様々な自動運転サービスに対する信頼が損なわれ兼ねません。
これはアメリカでの法律の話であって、日本とは話が別といった発想は通用しません。
なぜならば、自動運転ではグローバルで技術や法的な解釈の標準化や基準化が進んでいるからです。
むろん、国や地域の社会状況によって、自動運転の実用化に対する修正の幅が存在しますので、アメリカと日本との社会状況の違いを含めた説明が必要と筆者は考えます。
そうした日本社会における完全自動運転車の適合化についても、ホンダはGMシボレー「ボルボ」ベースの車両や「クルーズ・オリジン」を実際に使って研究開発をしてきたことを、筆者はこれまでホンダ関係者らから直接聞いてきました。
なおホンダの自動運転といえば、世界初となる自動運転レベル3に対応した「レジェンド」を2021年3月に発表しています。
レベル3では、運転の主体がクルマのシステムとなり、そのシステムが気象状況などによって運転続行が難しいと判断した場合、ドライバーに運転をリクエストする仕組みを持ちます。
こうした乗用車(オーナーカー)における高い自動運転技術は、バスやタクシーなどの公共的な移動車(サービスカー)での自動運転レベル4の実現に向けて極めて重要な役割を果たすものです。
また、自動運転レベル1とレベル2は、先進的運転支援システム(ADAS)の領域ですが、レベル3やレベル4での研究開発や社会実装から多くのフィードバックがあることで、量産車に搭載されるADAS機能の高度化がここ数年で加速してきたことも事実です。
そうしたホンダの自動運転に関する知見をGM、そしてGMが未来への投資としてその成長を支えてきたクルーズとともに有効活用するため、3社は2018年にモビリティ変革に向けた協業で合意。
2023年10月には3社でサービス提供を担う合弁会社の設立に向けた基本合意書を締結。
ホンダ青山本社で実施された、その記者会見に筆者も参加し、3社の経営トップの「クルーズ・オリジン」実用化に向けた熱い思いを聞きました。
しかし、カリフォルニア州内でクルーズの車両による人身事故が発生し、それより全米各所でのクルーズによるサービス事業が一時中断。
また、その責任をとってクルーズの経営トップが辞任する事態へと発展。
その後、新しい経営トップのもと、一部地域でクルーズのサービス事業が再開された矢先に、今回「クルーズ・オリジン」生産凍結がGMから発表されたという経緯です。
現状では、まずはホンダからの「クルーズ・オリジン」生産凍結における日本への影響についての説明を待ちたいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
GMと共同開発のFCVも解消。今度の自動運転もGM側が凍結と、ホンダさん大丈夫?
但しCR-VのFCV生産については現状のままだそうだ
私は技術の進化には基本的に肯定的ですが、不完全なまま急いで導入することはないと思います。じっくり完成度を高めてもらいたい。
そもそも事故は「何件までは起きてもOK」という訳ではないので、たとえ優秀な機械があっても、だから全部機械に任せて人間はタッチしないというのは適切ではないと思います。
そういう観点からはマイカー(オーナーカー)よりもトラックやバスそしてタクシーなどの方がちゃんとした運行管理者がいるでしょうから期待しています。