クルマの原価50%以上をソフトウェアが占める時代に? メカ製品”だけじゃない”デンソーが戦うための戦略とは
デンソーのソフトウェア戦略説明会が都内で開催され、現状と比較して、2030年までに人財1.5倍、2035年までに事業規模4倍を目指すための戦略について説明がありました。
人財の質と量を強化し業務効率化を進めることで、1.5倍の投入で事業規模を4倍へ
2024年7月12日、デンソーは東京支社(中央区日本橋)にて、今後のソフトウェアの戦略についての説明会を実施しました。自動運転や電動化、コネクティッドなど、モビリティの進化を支える基盤技術であるソフトウェアの重要性が高まっている現状を踏まえ、デンソーの今後のソフトウェアの戦略について、上級執行役員CSwO(Chief Software Officer)の林田篤氏が説明をおこないました。
林田氏はまず、クルマを取り巻く外部環境の大きな変化によって、多くの社会課題を解決していくために、(※)SDV (Soft Defined Vehicle)化におけるモビリティとしての進化(DX)が求められている現状を解説し、ソフトウェアの市場規模が急激に拡大するに従って、カーメーカーからTier1、Tier2サプライヤー…といった従来のピラミット型の構造から、今後大きく変革することが予測されると説明しました。
※SDV:制御をソフトウェアで行い、販売後も機能の拡充や性能の向上が図れるクルマのこと
そのなかでデンソーは、今後の基本戦略として総合システムメーカーならではの知見でモビリティ社会全体の安全と環境に貢献するために「実装力」「人財力」「展開力」という3つのテーマを掲げ、2030年にソフトウェア人財を1.8万人へ(現状比1.5倍)、2035年にはECU搭載分を含むソフトウェア関連の事業規模8000億円(現状比4倍)を目指すとしています。
デンソーが実現したい未来への戦略とは?
デンソーには、過去40年にわたる車載ソフトウェアの開発実績と、パワートレインやエアコンなどの環境機能から安全機能に至る車載全領域の開発知見の土台があるといいます。またそれらの知見から、従来は10%ほどだったクルマ1台あたりにおけるソフトウェアのコスト比率が、今後は50%以上を占めるようになると予測。これは、個別に車載されていた各ドメインが、クラウド化も含めた大規模統合ECUに集約されることによる比率上昇とのことです。
増大する開発工数に伴って、ソフトウェアの開発に携わる人材確保と育成に自動車業界全体が苦戦しており、業界内での人財獲得競争が激化しているとのことです。そのなかでデンソーは、2030年までにソフトウェアの開発量自体が3倍になると予測し、仕事のやり方改革や効率化を進めることで、1.5倍規模の人財の範囲でその業務量を賄い、ソフトウェア事業規模を現状の4倍にすることを目指すとしています。
またIT業界と比較して、自動車業界はソフトウェア人財の規模や“プロマネ人財”(プロジェクトマネージャーを担える質)ともに圧倒されていると分析しており、NTTデータとの包括提携によりソフトウェア人財を強化するとともに、開発拠点も新橋、日本橋室町、羽田など都心拠点を増やしていると説明しました。
林田氏は「デンソーはメカの会社というイメージがやはり強く、ソフトエンジニアに携わる人を集めるのがなかなか難しい状態になっている。社内のエンジニアをソフトエンジニアに転換していくことと併せ、デンソーはソフトウェアもやることができる会社だというブランディングの強化を進めていく」「『デンソーのソフトウェアがないと、モビリティ社会の未来はつくれない』。こうお客さまに言っていただけるような実績をしっかりとつくっていきたい」と説明を締めくくりました。
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