トヨタの「“最強”ライトバン」登場20年超でもなぜ売れ続ける? 使い勝手最強の“営業マン”マシン「プロボックス」一体何がスゴい?

プロボックスに弱点はある?

 プロボックスは経済性も優れています。フロントバンパーの角を分割した別の部品(しかも最上級仕様「F」を除き無塗装樹脂部品)とすることで、もし角を擦っても安価に交換可能。脱着作業も簡単におこなえます。

 同様にリアバンパーもサイズを小さくした無塗装部品(「F」を除く)で、交換時の費用を抑えているのも特徴的。見栄えよりもユーザーメリットを優先した、ある意味トヨタの本気を垣間見ることができます。

トヨタの商用ライトバン「プロボックス」
トヨタの商用ライトバン「プロボックス」

 加えて、昨今は「軽スーパーハイトワゴンでも200万円」といわれる時代に、プロボックスは152万9000円から177万7000円というプライスを実現しているのもすごさのひとつ(ガソリン車)。

 ライバル車には設定のないハイブリッドモデルも182万8000円から205万2000円までの範囲で選べ、同社のコンパクトカー「ヤリス」における最も廉価なハイブリッドモデル(「X」グレードで204万4000円)よりもさらに安いと知れば、驚く人もいるに違いありません。

 プロユースを前提に機能的でリーズナブルを最優先したプロボックスの存在は「自動車業界のワークマン」といっていいでしょう。

 一方で、ユーザー層を徹底的に絞った商品企画だけに、ウィークポイントもあります。

 たとえば、質素に徹したビジネスライクなインテリア。スーパーハイトワゴンなどの軽自動車よりも飾り気がなく、チープに感じられるかもしれません。

 また後席の作りも質素で長時間乗車には向かないし、そもそも荷物を載せることを考慮したサスペンションなので乗り心地も良好とは言い難いです。もちろん快適装備も充実はしていません。

 だから一般的なユーザーにおいては、価格だけを見て気軽に手を出すと火傷する可能性があるので、オススメできないのが正直なところ。質実剛健の意味をしっかりと理解した人だけに“買う資格”がある、まさにプロツールと言っていいでしょう。

※ ※ ※

 現在、新車で買えるライトバンとしてプロボックスのライバルといえるのはマツダ「ファミリアバン」と日産「ADバン」です。

 ただし、ファミリアバンはプロボックスとエンブレムが異なるだけのいわゆるOEMモデルなので、つまり実質的なライバルはADバンだけという状況になっています。

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Writer: 工藤貴宏

1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。

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