よく聞く「板金」って一体なに? キズやへこみはどこまで修復できる? パーツ交換のほうが良いケースとは?
事故や不注意でクルマを傷つけてしまった場合、よく「板金で直す」といいます。しかし、正確には板金は修理にまつわる作業のひとつではあるものの、「修正全般」という意味ではないようです。クルマにおける板金作業とは何を指しているのでしょうか。
クルマの「板金修理」ってどんなもの?
事故や不注意などでクルマを傷つけてしまったり、へこませてしまった場合、よく「板金修理で直す」と言います。
しかし、板金作業は修理に伴う工程のひとつではあるものの、「板金=修理」という意味ではないようです。
板金とは、簡単にいうと「パーツやパネルの交換をすることなく、金属製の板材を切断・穴あけ・曲げなどによって元の状態に復元させる」作業のひとつです。正確には、パーツの交換をせずに金属部品への加工・修復のみを板金と呼びます。
実際に板金作業も手掛ける現役整備士のH氏に聞いてみました。
「現在は、実際の板金作業だけでなく、修復に必要なパーツやパネルの交換、さらに修復箇所の再塗装までを含んだ作業を板金と呼んでいます。
塗装も必ず必要になることから板金塗装とも呼ばれることもあります」
一方で「デント」と呼ばれる修復方法もあります。
これは「リムーバル」や「ペイントレス デントリペア」が正式名称で、塗装面にほぼ傷がない状態でちょっとした凹みなどの場合、裏側から特殊工具を用いて金属を変形させて元の状態に近づける修復方法です。
ただし塗装面にひび割れがないことが前提となるため、塗装面が割れていたり削れてしまっている場合は、デントリペアのみで修理が完了するのは難しいと言われています。
「デントで修復できたとしても、塗装面にひびや傷が入ってしまった場合は再塗装をしたほうが良いでしょう。
塗装面のひび割れを放置していると、下地の金属パーツが外気や水気(雨など)に晒されることで酸化、錆びてしまうこともあるからです」(H整備士)
総合的にへこみや破損などの修復は板金作業が必要になるわけですが、どこまで直せるものなのでしょうか。
「板金(という言葉)としての範ちゅうは、ドアやボディのへこみや傷だけでなく、歪んでしまったフレームなども専用の修正機で修復することも含まれます。
ただし、損傷が激しかったり、修復後も十分な強度が保てないと判断した場合は、該当するパーツごと交換することもあります。
パーツ交換のほうが当然費用はかかりますが、安全性などを考慮すると板金だけでは難しいケースもあり、その判断は我々整備士がおこないます」(H整備士)
板金修理を依頼する方法はいくつかありますが、話が早いのはクルマを購入した販売店に相談し修理を依頼すること。
ただいくらピットを構えている販売店でも板金作業はできないことが多いので、設備が整っている板金専門の工場などに修理依頼することになるようです。
もうひとつは板金作業が可能な工場に直接相談し、修理をお願いすることもできます。この場合、販売店を経由しないぶん安く修理できる可能性があります。
H整備士が営む整備工場はショールームなどがない代わりに、複数台のピットや塗装ブースも完備。修理や車検整備などが主な仕事ですが、ボディの塗装やカスタムパーツの取り付けなども請けています。
また修復が難しい場合は、中古も含めて全国からパーツを探してくれるそうですが、そういった整備工場で問題となっているのは、修理箇所のチェックをしてもらったのに、お金を払わずに帰ろうとする依頼者が多いことだといいます。
作業を依頼することを前提として無料で修理箇所をチェックしてもらえるわけで、故障や修復するべき場所だけ診断してもらい、あとは自分で作業するというのは良識ある人なら避けるべきです。
板金で修理をするということは、それだけクルマ全体に大きな衝撃が加わったということでもあります。
表面の傷だけでなく、内側にも損傷がないか、走行に支障のあるトラブルが発生しないかを信頼できるプロにチェックしてもらい、しっかり直してもらうほうが良いでしょう。
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