スバルが新「4ドアセダン」初公開! 進化版「水平対向ターボエンジン」搭載!? 進化したWRX S4なのか? 期待高まる
スバルは、「ENEOS スーパー耐久シリーズ」に参戦予定の新型モデルを公開しました。
スーパー耐久シリーズに参戦する新型モデルを公開
2024年5月15日にスバルは、「ENEOS スーパー耐久シリーズ」に参戦予定の新型モデルを公開しました。
スバルはスーパー耐久シリーズに参戦する目的として「自社の人財育成」と「新型車両をバッテリーEVも含めた将来商品開発」をあげていますが、新型モデルにはどのような役目があるのでしょうか。
スバルは5月13日に開催された「2024年3月期」決算発表会で2026年末までに4車種のBEV(トヨタとの共同開発)をラインアップすると公言。
加えて、ハイブリッドモデルもトヨタハイブリッドシステムをベースに水平対向エンジンを搭載した「次世代e-BOXER」を次期フォレスターに加えてクロストレックにも展開拡大を発表しました。
主要自動車メーカーの中では「電動化の進捗が遅い」と言われてきたスバルですが、いよいよ本腰を上げたと言うわけです。
その2日後となる5月15日、スーパー耐久シリーズで開発車両が参戦可能なST-QクラスにスバルBRZで参戦を行なうTeam SDA Engineeringがニューマシンを発表。
写真を見る限りはスバル「WRX S4」がベースのようですが、車名は未公表。現時点で公表されているのは「水平対向ターボエンジン(レース用にチューニング)」、「シンメトリカルAWDシステム」のみです。
ピュアな内燃機関を搭載した開発車両でモータースポーツに挑む、これは一体何を意味するのでしょうか。
そのヒントは2024年1月に開催された東京オートサロン2024での「2024年スバルモータースポーツ活動計画」にあります。その際チーム代表である本井雅人氏は、S耐参戦に対してこのように語っています。
「人材育成については不変ですが、今シーズンは将来のBEVを含めた市販車へのフィードバックを目的とした活動に切り替えます。近い将来お客様に届けられる技術を織り込みながらレース現場で車両を鍛えていきます」
つまり、2024年のS耐の活動は個々のモデルを鍛えるのではなく、「次世代スバルの走りを探求するための開発」と言うわけです。本井氏は更に続けます。
「BEVはバッテリーの搭載により車両重量は重くなりがちです。
それでも『スバルらしいね』と言ってもらうためには、重くても運動性能を良くするためのシャシの考え方が必要になります。
『その実証にS耐は活用できる』と考えました。つまり、重くても『速く、気持ちよく、/誰にも乗りやすい』走りの実現です」
当然BEVはスバルの将来戦略の中で重要なソリューションの一つですが、その一方で内燃機関の可能性も模索しています。
この2年間、スバルはBRZを用いてトヨタと一緒にカーボンニュートラル燃料(CN燃料)の開発をしてきましたが、今回はその進化版と予想できます。
ちなみにこのマシン、上記のように現時点で公表されている内容は2点ですが、そのヒントは同じくWRX S4で参戦する他のカテゴリーのマシンにありました。
ちなみに全日本ラリーには2023年から新井敏弘選手率いるTeam ARAIがWRX S4で参戦。
このマシンはFA24ターボ+6速MT(TY85)+DCCD方式AWDの組み合わせですが、2024年からスバルエンジニアが帯同。
エンジンやDCCD制御に新たなトライが盛り込まれていると言います。
それにより、今シーズンはRally2/R5マシンに匹敵する速さを手に入れており、「表彰台まであと僅か」と言うポジションにいます。
ちなみに本井氏は現在、経営企画部に所属。会社からは「スバルのモータースポーツ活動を横串指してみて欲しい」と言われているそうです。
それを踏まえると、S耐のニューマシンも同じシステム構成と考えるのが素直でしょう。
なお現状ではスバルはニューマシンについて「4ドアセダンにレース用にチューンした水平対向ターボ エンジンを搭載。また駆動方式はスバルが磨き上げてきたシンメトリカルAWDを採用しています」と説明しています。
ちなみに本井氏は筆者に「ラリーとレース、技術のやり取りは積極的にやるべきだと思っています」と何やら意味深なコメントも残しています。
ただ、勘違いしてほしくないのは、このシステム構成の量産車(=WRX S4)が将来必ず登場すると言う事ではありません。
しつこいようですが、S耐の活動は「次世代スバルの走りを探求するための開発」であり、その実現のために現時点で可能な「スバル最強のシステム」を組み合わせて様々なトライ・検証を行おうとしているわけです。
ただ、そうは言ってもユーザーとしては「そんなモデルが欲しい」と思うはず。もちろん、日本のスバルファンがMTを欲しているのはスバル自身がよく解っていますが、その一方で「頑張ってMTを設定しても、言うほど買ってもらえない」と言う悩みもよく聞きます。では、どうすればいいのか。
スバル初の量産BEVであるソルテラを開発したPGMの小野大輔氏にインタビュした際に、このように答えています。
「研修で『2030年に何をしていたいのか?』と言う質問があり、私は『水平対向エンジンを作っています』と宣言しました。
更に『その土壌を作るためにソルテラを作りました』とも答えました。BEVを広げて環境対応をシッカリ進めていけば、その暁にはコテコテの水平対向エンジン搭載のやんちゃなクルマを出せるかなと思っています」
そう、スバルファンが求めているようなクルマは、BEV/ハイブリッドと言った電動車がたくさん売れれば出せます。
ちなみに技術トップの藤貫哲郎氏は「水平対向エンジン、シンメトリカルAWDが無くても、『スバルらしい走り』は実現可能です。実はそんな黄金レシピをすでに見つけましたので、今後もご期待ください」と語っています。
将来のスバルを背負ったニューマシンは、2024年5月24日-26日に富士スピードウェイで開催される「富士SUPER TEC 24時間レース」のイベント会場で展示されます。
この時に車両名称やスペック、参戦時期などを発信する予定だと言います。一体どのような走りを見せるのか。
そして、今後のスバルの進化にも注目したい所です。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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