マツダ新型「”魂動顔”トラック」実車公開! 全長5m超え&6速MT設定もある「BT-50」! “マツダ度”高めの「タフモデル」日本導入は? バンコクで登場
マツダのタイ法人が、第45回「バンコク国際モーターショー」で2024年3月20日に3リッターディーゼルエンジン搭載モデルのラインナップが拡充されたばかりの新型「BT-50」の実車展示を行いました。どのようなモデルなのでしょうか。
マツダの”魂動顔”「トラック」実車展示
マツダがピックアップトラックを販売している。今でも。そう聞くと「そんなわけないでしょ!」と思う人もいることでしょう。
日本では1999年に「プロシード」の販売を終了してラインナップからピックアップトラックが消えたのでそう感じるのも無理はありませんが、海外では今でも販売が続いているのです。
それが「BT-50」。タイで生産され、販売地域はタイをはじめとする東南アジアやオーストラリアなどオセアニア、中近東、中南米、アフリカなど広範囲に及びます。
驚くことに、デザインテーマはなんと「魂動(こどう)デザイン」。まるでクルマに魂を吹き込むかのごとく、エモーショナルで生命感のある造形を目指しているのがマツダの提唱する魂動デザインであり、現行型のBT-50はピックアップトラックながらそれを採用しているというわけです。
ただ、魂動とは言っても日本で展開している美しさを全面に押し出した魂動とは一線を画す雰囲気。
北米や中国で販売されている「CX-50」に似た、「国内未導入の野性味あふれる魂動デザイン」なのです。ピックアップトラックなので、これはこれでアリでしょう。
そんなBT-50ですが、実は車体設計や製造はマツダではありません。いすゞの「D-MAX」をベースに、内外装をマツダ向けに仕立てたモデル。つまりいすゞ製のOEM(相手先ブランド)商品というわけです。
OEMとはいえ、日本で売っているスズキ製の軽自動車は異なり、フロントデザインだけでなくボディパネルは基本的にBT-50専用(ドアやルーフパネルは共通と思われる)。顔つきからしてD-MAXとは全く違うので、マツダファンであってもD-MAXの兄弟車とは気が付かない人のほうが多いに違いありません。
室内はダッシュボードもD-MAXとは別デザインになっているうえに、センターコンソール脇にソフトパッドをあしらうなど上質化。そんなこだわりからもかなり力が入ったOEMモデルだということが理解できます。
ボディはピックアップトラックとしては例外的にいわゆる「シングルキャブ」がなく、一般的な4枚ドアの「ダブルキャブ」と、「RX-8」や「MX-30」のように観音開きドアを採用した「フリースタイルキャブ」の2タイプ。
エンジンは全車4気筒ターボディーゼルで、排気量は1.9L(150ps)と3.0L(190ps)の2種類が用意されています。
そんなBT-50ですが、この先日本市場で復活することはないのでしょうか。日本で展開していない理由はふたつ考えられます。
ひとつはイメージの問題。マツダはかつてミニバンも販売していましたが、ブランドイメージの向上を狙って2018年に販売終了。ブランドイメージのためにミニバンをやめるほどの会社が、ピックアップトラックを導入するとは考えにくい状況……でした。
もうひとつがマーケットの状況です。ピックアップトラックの市場は1990年代になると激減し、それがニッチ市場となった日本においてあえて展開する必要も理由もありませんでした。
しかし昨今はマツダのブランドイメージ戦略も変化し、たとえば日本では禁じ手となっていたモータースポーツ活動も段階的に開始。
流麗なデザインの都会的なSUVだけでなく、「CX-5」の「フィールドジャーニー」など泥っぽさを感じる商品展開も解禁されました。
そんな昨今のマツダのブランド戦略を見ていると、アウトドアテイストのSUVの延長線上として「個性的なSUV」としてピックアップトラックを展開するのも“ナシではない状況”になってきたといえるでしょう。
また日本におけるピックアップトラック市場も、トヨタ「ハイラックス」が年間1万台を売り、それを追う「三菱トライトン」も2000台の初期受注を得るなど活発化。
かつてのワークホース的な存在ではなく、キャラが突出したレジャービークルとしてピックアップトラックのポジションが定まりつつある今なら、爆発的とまではいかないまでも一定の販売台数は見込めそうです。
その2つの視点から考えると、日本でのマツダのラインナップにBT-50を入れる余地はあるように思えてきます。
マツダの関係者に尋ねてみたところ「もともと右ハンドルで作られているし、衝突被害軽減ブレーキなど先進安全機能なども備わっているからハードウェアとして日本への導入も大きなハードルはない」と言います。
魂動デザインのピックアップトラックが欲しいと思う人は、マツダのイベントなどを通じてマツダへ熱意を送ってみてはいかがでしょう。
ちなみに、タイ仕様の車両は右ハンドルというだけでなくウインカーレバーも右側についているのも日本人にとって嬉しいトピック。ただしアクセルペダルは、マツダがこだわるオルガン式ではなく一般的な吊り下げ式となっているので熱狂的なマツダファンには少し物足りないかもしれませんね。
Writer: 工藤貴宏
1976年長野県生まれ。自動車雑誌編集部や編集プロダクションを経てフリーの自動車ライターとして独立。新車紹介、使い勝手やバイヤーズガイドを中心に雑誌やWEBに寄稿している。執筆で心掛けているのは「そのクルマは誰を幸せにするのか?」だ。現在の愛車はマツダ CX-60/ホンダ S660。
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