トヨタ「プリウス」なぜ人気復活? 飽和状態のハイブリッド市場で“先駆者”が再び注目を集めるワケ
最上級のPHEVがハイブリッドよりも安く買えるカラクリ
プリウスは価格も注目されます。2リッターエンジンを搭載する主力グレードの「G」は320万円ですから、1.8リッターを搭載する「X」の275万円に比べて45万円高いです。
その代わり8インチディスプレイオーディオを始めとするセットオプション(Xのオプション価格は22万7700円)や19インチアルミホイール(同11万2200円)、上級ファブリックのシート表皮(7万2600円)など41万円相当の装備が加わります。
そうなると価格差の45万円から41万円を差し引いた4万円となり、さらにGは動力性能の高い2リッターエンジンを使ったハイブリッドを搭載していますから、余裕のある走りや充実した装備の割に、価格を抑えて買い得なのです。

PHEV(プラグインハイブリッド)の機能と価格も注目されます。「PHEV Z」の価格は460万円で、ハイブリッドZの370万円に比べると90万円高いです。
しかしPHEVでは、申請を行うと補助金が交付され、国からの交付額は55万円です。90万円の価格差の内、半額以上が交付され、実質価格差は35万円に縮まります。
さらに東京都では、国とは別に55万円(10万円のメーカー別上乗せ額を含む)の補助金も交付しており、合計110万円です。
補助金交付額が価格差の90万円を上まわり、東京都ではPHEV ZをハイブリッドZよりも20万円安く手に入れられます。
このように自治体によっては、ハイブリッドとの実質価格が逆転することもあり、PHEVはさらに買い得度を強めたのです。
しかもプリウスPHEVは、1回の充電により、エンジンを始動させずにWLTCモードで87kmを走行できます。システム最高出力も223馬力ですから、2リッターハイブリッドの196馬力と比べて14%の上乗せです。
このようにプリウスPHEVは高機能で、なおかつ補助金の活用により、割安に手に入れられます。PHEVの機能と買い得度も、プリウスの人気を高めた秘訣です。
このほかプリウスは、定額制カーリースのKINTOにも力を入れています。KINTO専用グレードの「U」も用意され、契約後に安全装備などを追加(アップグレード)できるサービスも展開されています。
こうしたKINTOのアップグレードサービスも、プリウスの登録台数を増やす要因でしょう。
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新型プリウスは「ハイブリッド=低燃費」の図式から脱して、外観をほかの車種よりもカッコ良く仕上げ、走りは楽しく、価格は割安に抑えました。
KINTOなどの利用方法も含めて、知恵と工夫を凝らすことで売れ行きを増やしました。
今の売れ筋カテゴリーは、実用重視の軽自動車/コンパクトカー/ミニバンで、趣味性を強めても好調に売るにはSUVが限界です。
全高が1500mmを下まわるセダン/ワゴン/ハッチバックは、全般的に販売が低調ですが、このカテゴリーで成功するには、さまざまな観点から魅力を身に付けることが不可欠で、プリウスはその代表でしょう。
(プリウスは2024年4月17日に後席ドアハンドルの開スイッチの防水性能が不十分とのことでリコールを届け出ており、生産が中止されています)
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。



































