マツダ「“スーツケース”カー」あった? 高さ75cm×幅57cmの極小ボディ! “重すぎ&荷物詰めなさすぎ“でもはや意味ナシな「斬新マシン」の正体とは
クルマに変身するスーツケース、と聞いてもピンと来ないかと思います。しかしそのアイデアをマツダは1991年に実現していました。「スーツケースカー」とは、どんなクルマだったのでしょうか。
34ccの2ストエンジンを搭載した「持ち運べるクルマ」
世界には色々な種類の乗り物がありますが、日常で使うモノがクルマに変身したら、大いに驚かされることでしょう。しかもそれを作ったのが日本の大手自動車メーカーなら、驚きは倍増します。
1980年代末から1990年代初期にかけ、当時マツダの社内では、いかにクリエイティブな乗りものを生み出せるかを競うアイデアコンペが開催されていました。そして1991年のコンペで優勝したのは、なんとスーツケースがクルマに変身する「スーツケースカー」でした。
アイデアの原点は、重くて大きなスーツケースを、空港内で効率的に移動させることにあったそうです。
優勝を勝ち取ったトランスミッション試験研究部門のエンジニアたちは、そのアイデアを実現するための予算を獲得。さっそく高さ75cm、幅57cmという大きなサムソナイトを用意すると、その中に、1.7psを発生する2ストローク単気筒・33.6ccのポケバイ用エンジン(ゼノア製G3K型)と3つの車輪を搭載しました。
完成したスーツケースカーは、閉じているとスーツケースの姿を保っていますが、開いてからステアリング機構となる前輪とバーハンドルを備えた部位部位を起こし、別々に格納してある後輪を取り付けることで、走行が可能な状態に。組み立て時間は、わずか1分ほどだったといいます。
走行モードのスーツケースカーは、クルマというよりは3輪にしたゴーカートのようなイメージ。「開いたスーツケースに車輪がついている」という愛嬌のある姿をしていましたが、なんとこの状態で時速30km/hを出すことができました。
しかし、スーツケースとエンジン、タイヤ、ステアリング機構、ガソリンなどの総重量は合計32kgに達しました。これでは、いくらスーツケースを楽に運ぶためのクルマとはいえ、 重すぎるのは確かです。しかも肝心のスーツケースの内部は、走行装置がいっぱいで荷物がほとんど収納できませんでした。
とはいえ、このスーツケースカーは、あくまでもアイデアを具現化したクルマ。その発想力や、乗りものとしての楽しさは群を抜いていることはたしかです。
「クルマが持ち運べる」ということに、夢がありました。スパイの「秘密道具」的な楽しさもあります。また、マツダというメーカーのチャレンジ精神や、企業に柔軟な発想を生む土壌があることを感じさせます。
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市販するために開発されたものではありませんが、スーツケースカーの斬新なアイデアは世界中で注目されました。
そこでマツダではその後、アメリカとヨーロッパ向けに2台の追加製作を行いました。後者はなんと、1991年のフランクフルトモーターショーのマツダブースで、同年のル・マン24時間レースで総合優勝した「787B」の脇に展示されたといわれています。現在では、アメリカでのプロモーション用に作られた1台のみが現存しているとのことです。
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