レクサス新型「GX」24年発売! 本格オフロードSUV登場で印象は? “本物”のマルチパフォーマンスカーとは
オフロードの印象は?
パワートレインの印象はどうでしょうか。
新型GXは直4-2.4Lターボ+8速AT内臓1モーターのハイブリッドとV6-3.5Lツインターボ+10ATが用意されていますが、今回の試乗はV6-3.5Lツインターボのみになります。
このユニットはLXからの水平展開と思いきや、ターボの小型化や専用制御などにより応答性を向上させたGX専用品。オンロードではターボと言うより大排気量NAのようなシームレスなトルク特性と高回転までストレスなく吹け上がる伸びの良さはGXのフットワークとマッチしています。
エンジンサウンドは遠くでかすかに聞こえるレベルと静粛性はすこぶる高く、走行中の会話明瞭度は同クラスのプレミアムクロスオーバーを軽く超えています。音質はマルチシリンダーらしい整ったものながらも、高効率エンジン特有の濁音は多め。
ただ、ドライブモードセレクトをスポーツS/スポーツS+を選ぶとスピーカーから疑似音がミックスされて聞こえてきます。その音はV8を彷彿とさせる低音が効いた図太い音で、思わずニヤッとさせるものです。
実は従来のレクサスの疑似音は音質だけでなくエンジン回転/アクセル操作とリンクせずガッカリなモノでしたが、GXのそれは積極的に聞きたくなるくらい自然なプラスα。静かだからこそ音づくりの重要性が表れている機能と言えるかもしれません。
10速ATは発進時にトーイングを考慮しているのか最近のクルマにしてはルーズな感覚がありますが、そこから先は小気味よさと滑らかさが共存するシフト制御になっています。
続いてオフロードです。
ここでは本命の「オーバートレイル」で走ります。コースはモーグルや急斜面、ぬかるみなどが設けられた特設コースと、特別な許可を得た自然の生きた道(未舗装路)。
トランスファーはH4→L4、センター/リアのデフロックをONにして走り始めます。オフロードは歩くようなスピードでの走行が鉄則ですが、そのような状況でもV6-3.5Lツインターボはまるでディーゼルのような粘り強さを見せてくれます。
丸太に沿って走るシーンでは車両周辺が確認可能なマルチテレインモニター、モーグルではE-KDSS、30度を超える斜面走行は基本素性(低重心や重量バランスの良さ)の高さ、急こう配の穴への進入/脱出はクロールコントロールの静かで緻密な制御を実感。
また、オフロード走行時はクルマが上下左右に大きく揺れますが、そんな状況でも乗員の頭のブレが少なく、動きがゆっくりに感じるたくみなボディコントロール、更にはショックの衝撃もクルマ全体で減衰してくれるので、悪路にも関わらず「乗り心地がいいよね」と思ってしまったくらいです。
この辺りはGA-Fの理想的なサスジオメトリーや従来モデル+86mmのホイールアーティキュレーション、更にE-KDSSの緻密な制御(オフロード走行中もスタビ効果を細かく変化)、専用タイヤのグリップ(サイドまで上手に活用)胸部の左右の揺れをいなす専用シート(シートバックが通常より柔らかめ)などの相乗効果によるものです。
ちなみに走行後、実際にその道を自分の足で歩いてみましたが、「こんな所を走っていたんだ」と愕然。また、他の人が走っているシーンを外で見てみていると、「サスが壊れているの?」と思うくらいの足の動きと大地をがっしり掴むトラクション、当たりそうで当たらないボディ下部の形状や角度など、オフロード最適設計になっているんだなと。
そんな中、新型GXのウィークポイントをあえて言うならば、「乗っていると、過酷な道が過酷に感じられない事」かもしれません。
生きた道での走行はそれほど過酷なシーンはなかったものの、進むにつれて道幅がどんどん狭くなるシーンでも、むしろどんどん先に進みたくなる安心感があります。
それは視界の良さ(無駄な突起がないフロントウィンドウ、ウエストラインが低いサイドウィンドウ、ドアミラーの位置・サイズ)、車両感覚がつかみやすいボンネット形状、更にステアリング切れ角の大きさなどにより、サイズは大きいけど手の内感が強いからでしょう。
また従来モデルはL4モードだとエンジンが唸る上にトランスファーも騒がしかったですが、新型は10速ATのワイドレシオを活かし普通に走れます。トランスファーの音はかすかに聞こえますが、ドグミッションのような心地よい音なので、クルマ好きならほとんど気にならないでしょう。
恐らく、今回の道は他のクロスオーバーSUVでもクリアできと思いますが、「走れるかも?」と「間違いなく走れる?」は大違い。そうと思える絶対的な信頼がGXには感じられました。
塚崎氏にそんな印象を伝えると、「細部まで妥協しないでこだわった事が、シンヤさんに直感的に伝わったんだと思っています。GXの全ての部分には意味があります。クルマを見ていると今でも苦労して実現させたエンジニアの顔が浮んできますね」と嬉しそうに答えてくれました。
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レクサスのブランドホルダーである豊田章男氏は「レクサスは本物を知る人が最後にたどり着くブランド」と語っていますが、新型GXはズバリ「本物を知る人が最後にたどり着くSUV」と言っていいでしょう。
見た目も走りもオフロードからホテルエントランスまで全てカバーできる、つまり道もシーンも選ばず、「誰でも」、「安心して」、「楽に」、「快適に」走る事ができる、“本物”のマルチパフォーマンスカー。
筆者はレクサスが目指す「二律創生」、「YETの思想」が、直感的かつかりやすく表現されているモデルだと感じました。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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