トヨタ新型「GRヤリス」がめちゃ凄くなった! 進化版は何が変わった? 現行オーナーが感じた「新たな魅力」とは

クルマ自体の進化はどう? 現行オーナーが感じた部分とは

 シャシ周りはGRMNヤリスほどではありませんが、更なる体幹アップが行なわれています。

 ボディはスポット溶接打点を約13%増加、構造用接着剤の塗布部位を約24%拡大すると同時に、走行中のアライメント変化の抑制のためにボディとショックアブソーバーを締結するボルトの本数を1本→3本に変更。

 これに合わせてサスペンションのセットアップも見直しが行なわれています(バネレートは若干アップされている)。

 電子制御多板クラッチ採用の4WDシステム「GR-FOUR」にも手が入っています。現行モデルの前後駆動配分は4WDモードセレクトによりノーマル(60:40)、スポーツ(30:70)、トラック(50:50)と変更できるも基本は固定式でしたが、進化型はノーマルは不変ですが、グラベル(53:47)、そしてトラックは走行状況に応じた可変式(60:40-30:70)に変更。

 今回の試乗車はRZハイパフォーマンスのみで、現行モデルと同じく前後にトルセンLSD、225/40R18のミシュラン・パイロットスポーツ4S、8J×18のBBS製アルミ鍛造ホイールを装着しています。

 ステアリング系は現行モデルでは足りなかった滑らかで雑味のない操舵フィールと直結感がプラスされています。これは3本締めボルトの採用に加えて最新のEPS制御も効いていると思われます。

 ハンドリングはややじゃじゃ馬な特性があった現行モデルに対して、操作に対する反応は自然になっており「ダイレクトなのに穏やか」と言う不思議な感覚です。更にコーナリングの一連の流れの連続性が更に増しているのも大きなポイントです。

 具体的にはターインは四駆とは思えない回頭性の高さ、コーナリング中はFFっぽさがより薄れ対角ロールが抑えられ今まで以上にリアタイヤを使い4輪で綺麗に曲がる感覚、そしてコーナー脱出時は後輪が今まで以上の蹴り出しを感じるトラクションを実感。

 この感覚は、GRMNヤリスに乗った時の印象によく似ています。ただ、GRMNヤリスが路面にピターっと吸い付くようにオンザレールで走るのに対して、進化型は現行モデルが持つヒラヒラ感に加えてドライバーの操作如何で挙動変化を起こしてスライド走行を楽しめる自在性を損なうことなく実現している事が、進化型の走りの強みです。

 ちなみに3つの4WDモードの中でそれが実感しやすいのはトラックで、それより安定方向なのはノーマル、自分でコントロールしたい上級者はグラベルがおススメです。

 更に言うと、現行モデルは挙動変化に対してクルマの動きにピーキーな所がありましたが、進化型ではまるでクルマの動きが穏やかになったかのような扱いやすさがプラス。

 つまり進化型の走りはGRMNヤリスと現行モデルのいい所が融合しているのです。

進化型と言いながらも、その伸び代はフルモデルチェンジ並みと言っていいレベル
進化型と言いながらも、その伸び代はフルモデルチェンジ並みと言っていいレベル

 この辺りは基本素性のレベルアップとGR-FOURの可変式前後トルク配分制御の相乗効果が大きいですが、筆者はこれに加えて刷新されたコクピット、視界が広がったインパネと最適化されたドライビングポジションも大きく寄与していると思っています。

 高い運動性能を引き出すための走行環境の構築、これも豊田氏が常日頃から語る「ドライバーファースト」の精神は、進化型GRヤリスにもシッカリと活かされているのです。

 乗り心地は今回サーキットのみの走行のため断定はできませんが、3本締めボルト採用によるサスペンションの無駄な動きの抑制や構造用接着剤によるボディの減衰効果などにより、硬めながらも雑味がなくスッキリとした足の動きなどから、快適性は現行モデルよりも高いと予想しています。

※ ※ ※

 そろそろ結論に行きましょう。進化型と言いながらも、その伸び代はフルモデルチェンジ並みと言っていいレベルで、現行モデルユーザーが「●●だったらいいのに」と言う部分がほぼ解消されています。

 改良モデルはネガを潰す一方で本来のコンセプトが薄まってしまう事もありますが、進化型GRヤリスのそれは走りの純度を高め、今まで以上に「濃厚」な味わいになっています。

 個人的な感覚としては三菱「ランサーエボリューション(初代)」が「V(5代目)」に、スバル「2代目インプレッサ WRX(2代目GDB)」が「C型」に進化した時の驚きに匹敵するレベルかなと思っています。

 現時点では価格は未公表です。現行モデルよりアップは間違いないでしょうが、伸び代を考えれば仕方ないかなと。筆者はグレード「RZハイパフォーマンス」でボディカラー「プレシャスメタル」、トランスミッションは可能性を信じて「DAT」を注文します。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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