STIが新たな「ニュル参戦車両」お披露目! “勝ち”にこだわって強化したマシンで24時間レースに挑む

スバルのモータースポーツ部門であるSTIが、2024年6月にニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦する新たな車両をシェイクダウンしました。

ドイツに置いてきた“忘れ物”を取りに行くべく、参戦車を強化

 スバルのモータースポーツを担うSTI(スバルテクニカインターナショナル)は2023年12月21日、「ニュルブルクリンク24時間レース」に参戦する車両をお披露目しました。
 
 ニュルブルクリンク24時間レースとは、ドイツのニュルブルクにあるサーキット「ニュルブルクリンク」で開催されるレースで、グランプリコース1周約5kmと、ノルドシェライフェと呼ばれる北コースの1周約20kmを繋げ、1周約25kmのコースで24時間の耐久レースをおこなうものです。

ニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦するSTIの車両
ニュルブルクリンク24時間耐久レースに参戦するSTIの車両

 コーナーの数は200近くにのぼり、高低差は300m超。路面はサーキット専用というより一般道に近く、そのため多くの自動車メーカーがテスト車両を持ち込んでテストすることでも知られています。

 STIはスバルの支援を受け、独自プログラムとしてレース車両開発や人材育成、市販車への技術フィードバックのため、2008年からニュルブルクリンク24時間レースに参戦しています。

 2008年当時は「インプレッサWRX STI」をベースにしたレーシングカーで挑戦を続けていましたが、2014年から2022年まではVA型と呼ばれる「WRX STI」で挑戦。

 2020年から2021年は世界的に新型コロナウイルスが流行したため参戦を断念し、そして2022年から挑戦を再開しました。

 そんなか、2023年の参戦では、現行「WRX S4」をベースにしたVB型にマシンをチェンジしています。車両が変わったことでエンジンも変わり、スバル/STIのレースを長年支えてきた「EJ20型」エンジンから新型の「FA24型」エンジンに刷新し、新時代の戦いに移行。2023年はFA24型エンジンがどこまで戦えるのか注目を浴びました。

 2023年は、QF(予選)レースでトラブルが続発し苦戦を強いられます。修復をおこない、本番の24時間レースに挑みましたが、冷却水回路不良や発電の不具合などのトラブルが発生。ピットイン作業などもおこなったものの、リタイアになるような大きなトラブルは発生していませんでした。

 しかし夜明けごろにサスペンショントラブルによりガードレールにヒットしてしまいます。なんとか自力でピットに帰ってこられたのですが、サスペンションはもちろん、エキゾーストマニフォールドからの排気漏れなども発生。

 とはいえリタイアはせず、エンジン交換やサスペンション交換など約4時間にもおよぶ修復作業をおこない、その後は無事に走り切り完走したのですが、目標には大きく届かず悔しい思いをして帰国してきました。

 そうしたことがあり、2024年の参戦車両ではトラブルが起きた部分は徹底的に開発と強化を実施。

 フロントスタビライザーの締結軸力アップや、エキゾーストマニフォールドはインコネル系材料を採用し形状を見直し、発電不具合を発生していたオルタネーター部分の改良、冷却水の経路を見直しエアボリューム式のタンクを新設。さらにエンジン主機の強化をおこなうなど、多くの部分に手が加えられました。

 さらに空力面も改善され、エアダクト周辺に各種ガーニーを追加、トラックリッドにもガーニーを追加、大きく後方に迫り出したウイングの翼端版の大型化、フロントアンダーパネルの形状変化、マット塗装とサメ肌による空力効果向上などもおこなっています。

 そして大きなトピックとして、ホイールブランドのBBSジャパンと協力して「STIフレキシブル・パフォーマンス・ホイール」を開発したことも挙げられます。

 このホイールは、微小蛇反応を良くして限界性能の向上を図るとともに、前後のホイールのリムの部分に差を付けてホイール自体の柔軟性を使いタイヤの性能を限界まで使うなどの工夫がおこなわれているそうです。

 辰己総監督は「悔しい思いをして帰ってきた。忘れ物をドイツにしてきてしまった。来年(2024年)はその忘れ物を取りに行き、なんとしても勝って帰ってきたい。『SP4T』というクラス優勝はもちろんのことだけど、総合順位で上位車両を追い越し、CUPカーや『GT4』クラスを駆逐していきたい。『GT3』マシンには届かないかもしれないが、総合での順位にこだわっていきたい」とコメントしました。

 SP4Tとは2.5リッターまでのターボエンジンを搭載したクラスです。

 2023年は4時間にも及ぶクラッシュの修復によってクラス2位になりましたが、クラス優勝はもちろんのこと総合順位にもこだわりたいと辰己総監督。

 さらに2019年に記録した145ラップを上回る周回数を記録したいとも話します。

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