スバル新型「和製スポーツカー」実車公開! なぜ“2ドアクーペ”作った? 斬新ド迫力な「スポーツモビリティコンセプト」が物語るデザインの発想と意図とは

未来のスバルの独自性を

 スバルといえば水平対向エンジンやシンメトリカルAWDといったイメージが強くあります。では、スポーツモビリティコンセプトはどうでしょう。

「パワートレインとしてはBEV以外は全くノーアイデアですし、デザインする上では全く設定をせずにやりました。そういった独自性はBEVの時代では難しくなってくることを踏まえ、それら以外でスバルの独自性をどう表現していくか、まさにデザインでそういったところが表現できないといけないし、そこでワクワクしてこれに乗ってみたいと思ってもらえることが一番大事なところです」と戸叶さんは話します。

スバルの新型2ドアクーペ「SUBARU SPORT MOBILITY Concept(スバルスポーツモビリティコンセプト)」(写真:中野英幸・内田千鶴子)
スバルの新型2ドアクーペ「SUBARU SPORT MOBILITY Concept(スバルスポーツモビリティコンセプト)」(写真:中野英幸・内田千鶴子)

 ではそのポイントは何か。

 戸叶さんは「まずは人を中心としたクルマ作りで、『スバル360』から脈々とやってきていますし、どんな時にもどんなところでも安心して走れるようなところにお客さまは共感してくれているのです。そういったところを改めてしっかりと紐解いて学んで、その上でBEVというコンポーネントを使ったら何ができるのかという新しい解釈、ソリューションを考えていかなければならないでしょうね」と決意を語りました。

 スポーツモビリティコンセプトを眺めると、直線基調のデザインだと感じられます。しかし、俯瞰すると前後フェンダーが張り出し、ドライバーを中心に四輪それぞれに力が向かうような立体構成となっており、その結果としてキャビン周りが少しえぐれたようにも見えます。これは明らかに意図のあるデザインです。

「スバルはこれまでもタイヤを強調するためにフェンダーの表現にはこだわりを持ってやってきています。スポーツモビリティコンセプトも、スポーツではありますが、サーキットを走るだけではなく、どんなシーンでも楽しく走ることを表現するために、プロテクトしていくというイメージを持たせたかったんです。

 また、エアロダイナミクス、空気の流れを意識させようとこのフェンダー周り、あるいはホイール周りでスポーツとエアロダイナミクスを両立させた表現です。今我々はこういう模索をしているんです」(戸叶さん)

 現時点では実験的ですが、将来はこのクルマから発展したデザインアイデアが採用されてくるかもしれません。

 空力といえば、大きなポイントがカラーで採用されています。それはブルー、WRブルーです。

 戸叶さんは、「スポーツを表現するときに、これまで我々が培ってきた何かを引き継ぎたいと思い、このWRブルーという特徴的な色を採用しました。この青いところは、風の流れるところをイメージして、そこにこのカラーを使うというテーマでやっています」と説明。

 また、カーボンも採用していますが、これは「チップドカーボン」あるいは「チョップドカーボン」と呼ばれるもので、スバルのスーパー耐久レースのマシンでもフードで使われています。いわゆる破材であり、リサイクルドマテリアルなのです。

 スバルは航空機も製造しておりカーボンの破材が出るため、それを使うことで無駄が出ず、環境負荷も低く、さらに従来と同じような軽さと強度が出せるという強みを持っており、あえて採用したとのことでした。

 ショーカー然としたスポーツモビリティコンセプトですが、実はフェンダーの作られ方や全体のプロポーションは、今後のスバルのデザインを示唆するイメージが盛り込まれているように思います。

 その理由は、戸叶さんが話すスバルのスポーツ性を表していると同時に、これまでもスバルのデザインの系譜を取り入れ、その要素を新たな解釈で取り入れているからです。BEVになってもスバルに求められる走りのイメージを今後どのように伝えていくか、そのデザイン提案の一つがこのスポーツモビリティコンセプトなのです。

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