全長4m切り! 「小さな高級車」がスゴかった! 小型車のレベル超え「豪華内装」採用の「ベリーサ」は登場が早すぎたのか?
コンパクトなのに上質・高級なプレミアムコンパクトカーは高い人気を誇っています。その先鞭をつけたのが、2004年に登場したマツダ「ベリーサ」です。現代の視点から見ても斬新で意欲的な「小さな高級車」を改めて振り返ります。
販売面は苦戦も「隠れファン」多いモデルだった
近年では、軽自動車や1~1.5リッタークラスのコンパクトカーでも快適装備・安全装備はほぼ過不足なく備わり、上級車並みの上質感を得ています。
そのため、「小さなクルマは質素」で「大きな車は高級」という“車格”の図式はもはやなくなりつつあります。
日産「ノートオーラ」やレクサス「LBX」などがその代表例で、コンパクトカーながらも高級感・上質感を謳った「小さな高級車」「プレミアムコンパクトカー」の存在は珍しくありません。
しかし以前では、年齢を重ね次第大きなクルマに乗り換えるという「ヒエラルキー(階級構造)」的なクルマ選びが常識的でした。そのため、コンパクトカーをベースにした小さな高級車は日本にはなかなか出現しませんでした。
そんな中、2004年にマツダは「ベリーサ」を発売。
キーワードは「シック」「モダン」「ハイクオリティ」で、「本物感の大人のコンパクトカー」を目指して開発されました。
ベースは2代目「デミオ」でしたが、外観はベリーサ専用のオリジナルデザインに。
グリルレスながら高級感を感じさせるフロント、伸びやかなルーフ、シックなボディカラーなどにより、クラスレスで上質な佇まいを生み出していました。
全高はタワーパーキングに収まる1530mm。大きめで力強いホイールアーチの造形も手伝って、現在の視点ではSUV的なイメージも感じられます。
ボディサイズは全長3975mm×全幅1695mm×全高1530mm、ホイールベースは2490mmです。
内装も小さな高級車のテーマに沿った仕立てに。ダッシュボードもベリーサ専用設計とされ、明るいベージュ系カラーを多用したことで、落ち着きと洗練さを漂わせていました。
フロントシートの骨格には2クラス上のミディアムセダン「アテンザ」用が奢られ、本革シートもオプションで設定。
カードタイプの電子キーを標準採用し、20GBのハードディスクに約3000曲を録音できるというミュージックHDD(オプション)の搭載など、当時のコンパクトカーとしては異例ともいえる高級装備も話題になりました。
さらにベリーサでは、静粛性にも配慮がなされていました。
フロアパネルへの制振材の配置を工夫することでロードノイズを大幅に低減。室内に入ってくる騒音に対しても、窓ガラスの厚みを3.5mmから4.0mmに増加させ、気密性を高めるドアとボディ間シールも全周二重構造化などによる対策を行なっていました。
エンジンはデミオの上級モデルにも搭載される1.5リッターとして、ゆとりある走りに対応。ベリーサ専用にチューニングされたサスペンションにより、走りの面でもクラスレスの快適な乗り心地と良好なハンドリングを両立していました。
このように、新しいジャンルのコンパクトカーとしてマツダが世に送り出したベリーサでしたが、ヒット作とはなりませんでした。
その理由のひとつとして価格設定があげられます。
ロワグレードで比較した際、デミオのベーシックグレード「カジュアル」の112万円よりもベリーサは約40万円高い153万円だったため、コンパクトカーとしては割高感がありました。
丹念に作り込まれたベリーサに見合う価格だったとはいえ、当時はまだ「小型車はシンプルで価格は手頃なもの」というイメージが強かったのも事実でした。
ところが興味深いのは、そんなベリーサがなんと2016年までの12年間、販売が継続されたことです。
これは、ベリーサがもともと基本設計に優れたコンパクトカーだったこと、シンプルで練り込まれた飽きのこないデザイン、高いハイトによる見晴らしの良さなどが時代を超えて評価されたためでした。
小さくて上質なクルマという存在も近年まで類がなく、これも一定のユーザー層に支持されていた理由でしょう。中古車市場でも台数が多く、人気の高さが伺えます。
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現在では、大きなクルマからの買い替えでも小さなクルマを買うなど「車格にとらわれない自分らしいクルマ選び」が当たり前になりました。
この時代にベリーサを振り返ると、たしかに現代にも通じる魅力が感じられます。まさに「出現が早すぎたクルマ」だったのかもしれません。
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