なぜ日産とホンダは「高級ブランド」を日本展開しない? 「既にクルマは売ってるのに…」 トヨタの歴史に見る新規参入の難しさとは

なぜインフィニティ&アキュラは日本導入に踏み切れない? その背景には「レクサスがたどった険しい道のり」があった?

 インフィニティブランドの導入について、過去に日産関係者は次のように話します。

「新しいブランドを導入するには、販売網の構築やそれに伴うスタッフの育成など時間とコストが掛かります。

 また、過去に何度かインフィニティモデルを日本で発売した実績や日本市場の動向を踏まえた結果としてブランドの導入には至らなかったのです」

 また同様にホンダの関係者は過去に「アキュラを導入することは過去に検討していました。しかし、様々な要因から白紙になっています。今後に関しても未定ですが、現在の日本市場の状況を考えると課題が山積みだと思います」と話していました。

 実際に日本導入を果たしたレクサスを見ると、プレミアムブランドとして一定の地位を得ていますが、販売台数で見るとメルセデス・ベンツやBMWといった欧州プレミアムブランドと均衡しており、輸入車の牙城を崩しているとは言えません。

 また、レクサスが日本へと導入される際、想像を絶するコストを要したと言われています。

 当時のトヨタでは、北米ではレクサスブランドで販売されているモデルをトヨタブランドで販売していたことから、レクサスブランドを導入に際して双方のラインナップを整理する必要がありました。

 前述したセルシオとLSに加え、「ハリアー」と「RX」、「SAI」と「HS」、「ソアラ」と「SC」など、両ブランドでほぼ同じクルマが並ぶことになったため、おもにトヨタブランドのモデルがラインナップから外れることとなりました。

 しかし、ハリアーのような人気モデルまで販売終了となってしまったため、ユーザーからの反発を招いてしまいました。

 その後、ハリアーはRXとは別のモデルとして復活を果たすことになりますが、ユーザーが大きく混乱したことは事実です。

2020年に日産グローバル本社ギャラリーにて「インフィニティラウンジ」が開設した
2020年に日産グローバル本社ギャラリーにて「インフィニティラウンジ」が開設した

 さらに、ディーラーサービスも既存のトヨタブランドの店舗とは大きく異なるため、販売員のトレーニングなどにも多くの時間を要したと言います。

 レクサスの日本導入が発表されたのは2003年のことですが、実際に導入されたのはそこから2年後の2005年です。

 また、トヨタブランドとのモデルの整理がひと通り完了したのが2013年ころであることを考えると、新たにブランドを導入するためには、10年単位での計画が必要であることがわかります。

  レクサスが辿ったこうした道のりを考えると、日産やホンダがインフィニティ・アキュラの日本導入に二の足を踏むのも無理はありません。

※ ※ ※

 もちろん、新たなブランドの導入は決して簡単なものではなく、日産やホンダがそれぞれのプレミアムブランドを日本へと導入できない理由を挙げればキリがありません。

 一方、日本のユーザーのなかにはインフィニティやアキュラの導入を望む声も根強く、今後の展開が期待されています。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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