えっ…!? 「謎のHな標識」なぜ出来た? 珍しい形状が出来た理由とは
東京都世田谷区には、実際の道路の構造を反映して複雑なデザインとなった標識が存在しています。どのようなものなのでしょうか。
めずらしい「H」型の看板はなぜ登場した?
複雑な道路が多い地域では「指定方向外進行禁止」の標識も実際の道路の構造を反映して複雑なデザインとなることがあります。
東京都世田谷区には、そんな標識の代表例とも言えるものが存在しています。
矢印で指定された方向以外への進行を制限する「指定方向外進行禁止」の標識は、道路の構造によってデザインが変わるというめずらしい特性を持っています。
たとえば、直進しか認められていない道路ではシンプルな一本の矢印で表されますが、左折と右折のみが認められている交差点ではT字型のデザインで表されることになります。
また、矢印の向きや角度は実際の道路の構造を反映していることが多く、複雑な構造の道路では標識のデザインも複雑なものとなります。
なかでも、道路が複雑に入り組んでいることで知られる東京都世田谷区には、全国的にもめずらしい変わったデザインを持つ指定方向外進行禁止の標識が数多く存在するようです。
そのなかのひとつが、多摩川にほど近い野毛2丁目にある標識です。
アルファベットの「H」のような形状をしており、上部がどちらも矢印となっています。
また、「H」の先端に当たる場所のすべてにほぼ同様のデザインの標識があるため、合計すると4つのめずらしい標識があることになります。
この標識があるのは、多摩川の土手沿いを走る「多摩堤通り(都道11号線)」と生活道路をつなぐ場所です。
この地域では、土手の上を走る多摩堤通りに対し、土手の下側を並行するかたちで生活道路が通っているため、それらが接続する部分は必然的に「H」型となります。
多摩堤通りは片側1車線ですが、生活道路には車線がありません。しかし、道路幅はそれなりにあるため、Uターンをする方向へと曲がることは物理的には不可能ではありません。
しかし、各所にこの標識が設置してあることで、どの方面からもUターン方向へ曲がることはできません。逆に言えばどの方面からもUターン方向以外へは進行することができます。
こうした標識が設置された背景には、付近の生活道路が「抜け道」として利用されやすいことが関係しているようです。
世田谷区喜多見と大田区蒲田をつなぐ多摩堤通りは、付近を走る環状八号線(環八)のう回路としての役割を持っていることから、常に一定の交通量があります。
また、多摩堤通りにつながる生活道路を抜けて多摩堤通りと環八を行き来するクルマも少なくないことから、この付近は交通事故の懸念が絶えない地域でもあります。
そのなかで、2つの道路が接続する信号のない交差点でUターン方向への進行を許可してしまうと、渋滞や交通事故を引き起こす可能性が高いのは火を見るよりも明らかです。
大きな川沿いの土手を走る道路とそれに並行して走る道路という構造自体は、全国的に見ても決してめずらしいものではありません。
ただ、両者が交わる場所には信号が設置されていたり、あるいは交通量が多くないなどの理由からそもそも指定方向外進行禁止の標識がない場合も多いようです。
一方、この付近は河原と住宅地に挟まれているため、信号のある交差点を設置できるだけの物理的なスペースがありません。
また、環八や第三京浜道路玉川ICが近く交通量も多いことから、安易に信号を設置しにくいという事情もあるのかもしれません。
めずらしい「H」型の標識が誕生したのは、こうした条件が見事に重なった結果と言えそうです。
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ちなみに、同様の標識は野毛2丁目付近のほか、玉堤1丁目付近でも見ることができます。
しかし、そこから数百m進んだ大田区田園調布4丁目にある交差点では、野毛2丁目や玉堤1丁目と同じ構造であるにもかかわらず、指定方向外進行禁止の標識はありません。
このように、条件の近い環境でも標識の設置状況には差があるようです。
道路の構造なんだから『それで?』と言う程度の記事