トヨタは姉妹車廃止するんじゃなかったの? 「ノアヴォク」「アルヴェル」なぜどっちも売る? “似たような車種”残した事情とは
2020年に全店舗が全車種を販売する体制に移行したトヨタですが、「ノア/ヴォクシー」「アルファード/ヴェルファイア」は統廃合せずに残しています。どのような事情があったのでしょうか。
姉妹車廃止を進めるなか統廃合されなかった車種がある
トヨタは2020年5月に、国内で4つあった販売網を再編して、全店が全車を扱う体制に変わりました。全店が全車を扱うと、もはや販売系列のために基本部分を共通化した姉妹車を用意する必要はありません。例えばトールワゴンの「ルーミー/タンク」は、今ではタンクを廃止してルーミーのみになっています。
ところが2022年1月に発売されたミドルサイズミニバン「ノア/ヴォクシー」と、2023年6月に発売されたラージサイズミニバンの新型「アルファード/ヴェルファイア」は、両方ともに姉妹車を残しました。同じ店舗で基本設計が共通の姉妹車を扱うのです。なぜ姉妹車を残したのでしょうか。
ノア/ヴォクシーの開発者は、以下のように説明しています。
「従来型はノア、ヴォクシーともに人気が高く、お客さまに認知されているために、新型では両車とも残しました。
ただし今は、すべての店舗で両車を販売するため、標準的な車種はノアで、それでは満足できないお客さまに向けて、より個性を強めたヴォクシーが設定されています。
そのためにノアには標準ボディとエアロ仕様がありますが、ヴォクシーはエアロのみです」
トヨタの販売店ではどのように受け止めているでしょうか。
「新型のノアとヴォクシーを発売した直後は、ヴォクシーはアクが強いと敬遠され、若いお客さまでもノアを購入することがありました。
しかし時間が経過すると、外観が見慣れたためか、ヴォクシーの人気が再び高まっています」
1か月あたりの販売台数を見てみると、トヨタが販売網を再編する前の2019年には、ノアが4390台、ヴォクシーは7334台でした。その後、全店が全車を販売する体制に変わった後の2021年はノアが3684台、ヴォクシーが5840台と、ノアが4割弱、ヴォクシーが6割強となっています。
そして、直近2023年1月から6月の台数を見ると、ノアが8415台、ヴォクシーは8112台と両車でほぼ同じです。
その点、新型アルファードとヴェルファイアは事情が少し違います。
ヴェルファイアは2代目アルファードの姉妹車として、2008年に誕生しました。販売店はアルファードがトヨペット店、ヴェルファイアはネッツ店です。ヴェルファイアはアルファードに比べるとフロントマスクが派手で、販売店舗数もネッツ店が多く、売れ行きを増やしました。
2015年にフルモデルチェンジした後もしばらくはヴェルファイアの登録台数が多かったのですが、2018年1月のマイナーチェンジで逆転。アルファードが仮面のようなフロントマスクにメッキを散りばめてデザインを際立たせ、これが売れ行きにも良い影響を与えたのです。
その後2020年5月にトヨタの全店が全車を扱う販売体制へ移行。2020年下半期(7月から12月)の1か月平均登録台数は、アルファードはコロナ禍の影響を受けながらも9025台に達した一方で、ヴェルファイアは1218台ですから、アルファードの13%です。
ここまで差が付いたため、2021年にはヴェルファイアは特別仕様車のみの設定になりました。
そして売れ行きがさらに下がり、2022年の1か月平均登録台数は、アルファードが約5000台でしたが、ヴェルファイアは約190台と、アルファードの4%まで減りました。
エスクァイア「・・・」