なぜ教習所の「教官」厳しかった? 昔は「罵声」も今では「ほめる教習」が増加 教習の指導方針が変化した理由は
「褒める」指導への方向転換の理由は?
かつては指導が厳しかった傾向にあったようですが、今では真逆の「優しい」指導をする教習所もあるようです。

その背景には少子高齢化、若者のクルマ離れなどもあり、新規教習生の数は年々減少していると言います。
こうした状況で各教習所がサービスの差別化、顧客獲得を目指すために、今までの「叱る」から「褒める」指導方法へと変化したのではないかとI氏は話します。
「言葉は悪いですが、今までは多少横柄な教官でも次から次へと教習生が来てくれていたので問題になりませんでしたが、少子高齢化により教習生が減り、より良いサービスを心がけているケースが増えたと聞いています。
また現代では企業のコンプライアンスが重視され、高圧的な態度は『パワハラ』と取られてしまう時代。これに拍車をかけるのがSNSの普及で、今までは(短期間の通学のため)教習生同士の会話はあまりありませんでしたが、相性の悪い教習生が『○○教官って嫌だよな』などとつぶやかれると、SNS上で拡散されてしまうわけです。
さらにとある教習所では『教官人気ランキング』なども実施されていると聞きます。教習生に気に入ってもらえるように、厳しい言葉より優しく褒める指導へと変わっていったんだと思います」
この点については自動車教習所業界だけでなく、多くの業種でも共通した変化が見られます。ましてや受講料として多額のお金を払ってくれている教習生はお客様なのですから、高圧的な命令口調では続けていけないのも納得です。
「個人的には、偉ぶるわけでもなく粛々と指導してきたつもりです。なので、ときには危ない操作は注意しましたし、気をつけなければいけないポイントなどは、つい厳しい口調だったかもしれません。
それでも、教習生がいざ路上に出たとき役に立つアドバイスとして指導してきた人間もいるのは覚えておいて欲しいです」(元教官I氏)
現在の教習生の多くは、いわゆるZ世代よりさらに若い世代に移りつつあります。少子化やゆとり教育の名残などもあり、叱られることに慣れていないという傾向もあります。また教習所の数も過去より増えた結果、教習所同士で顧客の取り合いもさらに激化しているのだとか。
「また、実際に褒める教習は効果も高いのだそうです。AT限定免許が主流になったおかげで以前のようにエンストする教習生も激減したのも、厳しく指導する必要がなくなった要因の1つでしょう」(元教官I氏)
ただし、だからと言って褒めるばかりが正解でないのも事実です。クルマ社会に適応できるよう、いかに効率的かつ的確に必要な技術を指導できるかが重要なポイントです。
最近では設備も新しく充実している教習所も増え、一部では輸入車の教習車を採用するなど、多様な面から顧客満足度を高めようという企業努力も垣間見えます。
「以前と比べたら、免許を取得するハードルはさらに下がったと思います。また今までの『指導』とは違う、『学んでいただく』という顧客ファーストのサービス業に近づいているのかもしれません」(元教官I氏)
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時代背景などからかつての厳しい教官は減っていき、優しい指導をする教官が増えており、同じ自動車教習所でも教習の雰囲気は変化しています。
しかし、路上に出てしまえばすべてイーブンです。優しい言葉は消え、交通の流れは速く、ときには強引なドライバーに遭遇したり、クラクションを鳴らされることもあります。
基本的な交通ルールを学ぶのも大事ですが、何より実際の交通の流れにうまく乗ることができ、いつでも譲り合いの精神を持ち続けられるよう、むしろ免許取得後のほうがスキルアップが必要なのかもしれません。
Writer: くるまのニュースライター 金田ケイスケ
2000年代から新車専門誌・輸入車専門誌編集部を経て独立。専門誌のみならずファッション誌や一般誌、WEB媒体にも寄稿。
中古車専門誌時代の人脈から、車両ごとの人気動向やメンテナンス情報まで幅広く網羅。また現在ではクルマに限らずバイクやエンタメまで幅広いジャンルで活躍中。
























































