パトカーはなぜ「セダン」多い? まさかの「クラウンSUV」はダメ!? 警察車両に定められた「ルール」とは

街で見かける警察のパトカーには、トヨタ「クラウン」に代表されるセダンタイプを多く見かけます。セダンでないとならない決まりはあるのでしょうか。

実は細かく決められている「パトカーの仕様」とは

 街中では、白と黒に塗られたトヨタ「クラウン」などのセダン型パトカーをよく見かけます。ではなぜ、パトカーのメインはセダン型で、しかもクラウンが多いのでしょう。
 
 そして、16代目でSUVタイプに進化した新型「クラウン クロスオーバー」は、パトカーに採用されることはあるのでしょうか。

セダンじゃないとダメ!? 写真は1980年代に導入された日産「スカイライン」2000GTターボ(C210型・通常「ジャパン」)をベースにしたパトロールカー(交通取締用車両)
セダンじゃないとダメ!? 写真は1980年代に導入された日産「スカイライン」2000GTターボ(C210型・通常「ジャパン」)をベースにしたパトロールカー(交通取締用車両)

 広辞苑によれば、パトカー(パトロールカー)とは「警官が乗って、犯罪や事故の防止のために巡回する自動車」とされています。

 正式には、交通取締用の車両を「交通取締用四輪車(交通取締用無線自動車)」、パトロールに使用される車両を「無線警ら車(警ら用無線自動車)」と称しています。

 余談ですが、屋根上に赤色回転灯を昇降させる装置を備えていれば「無線警ら車」として見分けることができます。

 また、ミニパトとして親しまれている「小型警ら車」や、捜査や交通取締り、警護などに使用される「覆面パトカー」なども存在します。

 パトカーは税金で調達されるため、費用を抑えることが重要です。そこでパトカーを導入する際は、入札により一番安い価格を提示したメーカーのクルマが選ばれます。

 なおパトカーの購入には、国の予算「国費」で買う場合と、都道府県それぞれの予算「県費」で買うパターンがあります(そのほか「寄贈」によるものも)。前者では、警察庁が数千台規模で購入し、日本各地に配備を行います。

 さらに国費で購入されるパトカーの場合、どんな車種でも良いわけではなく、警察庁が定めた「仕様」を満たさないとなりません。

 その仕様はたいへん細かいため、無線警ら車に関する内容を以下に抜粋すると、

・車体は、セダン型で4ドアであること

・排気量は、2500cc級以上であること

・前部席の座面から天井までの高さは900mm以上であること

・乗車定員は、5名であること

・各座席は、承認を受けたビニールレザー等の耐水性・耐久性の高い素材とすること

・ブレーキは、四輪ディスクブレーキ同等以上で、アンチロックブレーキシステムを装備していること

・サスペンションは、トランクルームに常時約60kgを積載し、かつ昇降機構付き警光灯を搭載して約20万km走行することに耐えうる構造とすること

・トランクルーム容量は450リットル以上あること(無線警ら車4WDは430リットル以上)

・トランクは、約1万回の開閉を行うことに耐えうる構造とすること

 このように、とても厳しい内容となっています。

 そこで各メーカーは入札に望むために「パトカー専用グレード」を開発することが多いようです。

 かつては日産では「スカイライン」の歴代モデル(2代目から8代目)に、スバルも「レガシィB4」(4代目および5代目)などにパトカー専用グレードを設定していましたが、厳しい諸条件を既存車種に反映させるには、手間・開発コストがかかってしまいます。

 さらに、メーカーとしても売れにくいセダンをラインナップから削るようになった結果、次第にパトカー専用グレードのセダンを用意するのはトヨタだけに。

 こうして、必然的にクラウンのみがパトカーとして採用される現在の状況が生まれました。

「でも、警察庁の仕様を満たしそうにないSUV型のパトカーや、ミニパトもあるのはなぜ?」

 このような疑問を持った人もいるかもしれません。

 実は上記の条件は、「国費」で買う(入札される)「無線警ら車」に適用されるものなのです。

 そこで北海道警では最新型の日産「スカイライン」を、警視庁はトヨタ「マークX +Mスーパーチャージャー」の覆面パトカーを、埼玉県警は日産「ティアナ」の無線警ら車やスバル「WRX」の覆面パトカーなど、各自治体のニーズに合わせ、仕様書適用外のパトカーを独自導入。各地でクラウン以外のパトカーを見ることができます。

 参考までに、最新型のクラウンパトカー(15代目・220系)では、2リッターターボエンジン版と、2.5リッターハイブリッド(2WDではなく、4WD)版が納入されており、2022年からはパトカー電動化の方針により、後者のみが配備されています。

 2022年(令和4年)度では無線警ら車242台が納入され、調達価格はそれぞれ約420万円でした。

 ちなみに、以前の14代目(210系)クラウンの無線警ら車は約300万円だったため、大幅に値上がりしていることがわかります。

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