クルマの「軽量化」でなぜ性能が向上する? 重いより軽いほうが断然有利! 軽さを追求する理由とは
クルマの重量を軽くすると、すべての性能が向上するとされており、大胆な軽量化をおこなうモデルも存在しています。軽さがもたらすメリットとは何なのでしょうか。
リアシートを取っ払って軽量化したモデルも存在!?
クルマ好きの間では「最近のクルマは重たくなった」という声が聞こえてくることがあります。
しかし、近年はフルモデルチェンジして登場した新型車は先代よりも軽量化を施して登場することも多くあり、さまざまな手段でボディを軽く仕上げるモデルが存在します。
クルマを軽量化すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
近年登場したモデルでは、軽さに特化したマツダ「ロードスター」の特別仕様車「990S」が設定されたり、リアシートを撤去して2人乗りとすることで約30kgの軽量化を実現したトヨタ「GRカローラ(モリゾウエディション)」など、「徹底した軽量化」をうたったものまで存在します。
「軽量化はどんな効果をもたらすのか?」という問いに対する回答としては、「すべての性能を向上させる効果がある」というのがもっともシンプルで分かりやすい答えだといえます。
同じエンジンだったら軽いほうが加速性能は優れていますし、旋回速度も軽くすることで高められます。また、同じブレーキシステムならば軽いほうがより短い距離で止まることが可能です。
このように走る、曲がる、止まるといったクルマの基本性能はもちろん、ユーザーの関心が高い燃費性能を始め、タイヤやブレーキなど消耗品の耐摩耗性など経済的な性能も向上します。それだけ軽量化は良いこと尽くめなのです。
しかし、やみくもにクルマを軽くすればOKという訳にもいかないのが自動車開発の難しいところ。たとえば軽量化のために車体に穴を開けたりするとボディ剛性が落ちてしまい、動力をしっかりと伝えたり、サスペンションを有効に働かせることができないため、安定した走行性能を実現できなくなってしまいます。
また、市販車として販売する場合、各種安全装備やエアコンなどの快適装備も必須なうえ、さらに衝突安全基準への対策も必要となるなど、軽量化に対して現代のクルマ造りではさまざまなハードルが存在するのです。
単純なアプローチでは軽量化が難しい現代のクルマ造りでは、素材やパネル同士の結合方法を変更するなどの方法により、創意工夫と目まぐるしい努力で軽量化を実現しているのです。
素材の軽量化と聞くとカーボン素材の採用を思い浮かべるかもしれませんが、それ以外にも外板にアルミや樹脂パーツを使用したり、構造材に高張力鋼を使用したりすることで薄肉化して軽量化するなど工夫されています。
また、これらの素材の生産コストを安くして、高価なモデルだけでなくエントリーモデルにも採用できるようにする開発がおこなわれています。その結果、クルマに使用される鉄鋼素材の比率は徐々に下がっているのです。
このような車体や足回りを中心とした軽量化は今後の電動化でより重要となってくるでしょう。バッテリーEVを始め、ハイブリッド車を含む電動車の場合、大容量の駆動用バッテリーを有するためどうしても車重が重くなりがちです。
もちろん、開発が進めばバッテリーやモーター自体も軽くなることはあると思いますが、現在よりも急激に軽量コンパクトになるのは難しい話だと考えられます。だからこそパワートレイン以外での軽量化が重要になってくるのです。
バッテリーEVの登場により、新たに自動車産業に参加するメーカーが増えてきましたが、クルマ造りにおける軽量化のノウハウは歴史ある自動車メーカーが差を付けることができるポイントともいえるでしょう。
新型車が登場して軽量化をアピールしていたら、先代モデルとくらべて何キロ軽くなったかにも注目ですが、「どのようにして軽くしたか」にも注目すると、よりクルマ造りが面白く見えてくるかもしれません。
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