リアが「パカッ!」 斬新すぎるクロスオーバーが「ダイハツ」にもあった! 先駆け系5ドアセダン「アプローズ」とは

ダイハツが1989年に発売した「アプローズ」は、フォーマルな3ボックスセダンのスタイルを採用しながら、斬新なリアゲート「スーパーリッド」を備えるという、いま流行りのクロスオーバーモデルの先駆けのようなクルマでした。

「拍手喝采」を表す世界統一ブランドだった「アプローズ」

 高級4ドアセダンブランドとして長年にわたって活躍し続けてきたトヨタ「クラウン」が、2022年のフルモデルチェンジを機に、SUVテイストを加えた「クラウン クロスオーバー」へ進化し、大きな話題を呼んでいます。
 
 しかしこうしたセダンのクロスオーバーモデルが、今から30年以上も前の1989年にダイハツから世界に先駆けてデビューしていたことは意外と知られていません。

セダンなのにリアが「パカッ」!? クラウンよりも30年以上早かったダイハツのクロスオーバーセダン「アプローズ」[画像提供:ダイハツ]
セダンなのにリアが「パカッ」!? クラウンよりも30年以上早かったダイハツのクロスオーバーセダン「アプローズ」[画像提供:ダイハツ]

 ここのところ圧倒的な人気を誇っているクロスオーバーSUV。それだけにクロスオーバーという言葉を聞くとSUVスタイルの車型を思い浮かべがちですが、クロスオーバーとは「異なる要素がお互いの境界線を越えて交じり合う事」を指しており、決してSUVスタイルだけを指すものではないのです。

 そういった意味では“セダンとハッチバック”をクロスオーバーさせて1989年7月に登場したダイハツ「アプローズ」はクロスオーバーモデルの先駆け的な車種といえるかもしれません。

 今回はそんな「早すぎた」クロスオーバーモデルのアプローズを振り返ってみたいと思います。

 軽自動車やコンパクトカーを得意とするダイハツですが、ユーザーがクラスアップすることに備えて、リッターカーの「シャレード」よりも1クラス上、トヨタ「カローラ」や日産「サニー」クラスの対抗車種となる「シャルマン」というモデルをラインナップしていました。

 ただこのシャルマンは、一世代古いカローラのプラットフォームを流用したモデルであり、ダイハツオリジナルの車種とも最新モデルともいえない、微妙な立ち位置の車両となっていたのです。

 そのクラスの新規車種として投入されたのがこのアプローズであり、ダイハツとしては念願の完全自社製のモデルとなっていました。

 それだけに多くの意欲的なポイントがありましたが、やはり一番インパクトが大きかったのが、「スーパーリッド」と名付けられたリアゲートでしょう。

 一見するとセダンに見えるシルエットですが、実はバンパーレベルから大きく開くハッチゲートとなっており、トランク容量は366リットルと、当時のクラス最大の数値となっていました。

 リアに備わるトレイは一段低くした位置となっており、小物をリアトレイに置いたときにリアゲートへの映り込みを最小限にするなど、きめ細やかな配慮がなされていた点も美点といえます。

 その特徴的なスーパーリッドばかりが注目されるアプローズではありますが、実は搭載されていた1.6リッター直列4気筒エンジンも新開発のもので、アルミ製エンジンブロックを採用したロングストローク仕様。

 キャブレター仕様とインジェクション仕様の2種類が用意され、インジェクション仕様は120PSというスポーツモデルに匹敵する高出力を発生し、1トンを切る車重(2WDモデル)と相まって軽快な走りも実現していました。

 また足回りには一部グレードに周波数感応型のダンパーを採用したほか、ブレーキも全車にフロントベンチレーテッドディスクを採用し、最上級グレードのRiとオプションのABS装着車はリアもディスクブレーキになるなど、当時のモデルとしては車格以上の装備を備えていました。

 FFのほか四輪駆動仕様も用意され、センターデフとビスカスカップリングを備えた本格的なフルタイム4WDとなっていました。

 その他のオプションではオートエアコンにクルーズコントロール、オートライトも用意される充実ぶりだったのです。

 このように非常に意欲的なニューモデルとして登場したアプローズではありましたが、新型車故に登場直後にリコールが発生してしまったことも相まって、出鼻をくじかれる形となってしまいます。

 翌1990年10月には車名を「アプローズ シータ」と改めますが、1992年7月のマイナーチェンジ時に再び「アプローズ」に戻すなどやや迷走しながらも、1997年9月のビッグマイナーチェンジでは大型のフロントグリルを備えるなどイメージを一新。

 特にインテリアは非常に手が加えられ、インストルメントパネルの形状を一新し、オーディオスペースを上部に持ってくるなど、ナビゲーションの装着も考慮した近代化を図り、デュアルエアバッグを標準装備するといった安全装備の強化も実施していました。

 しかし如何せん80年代にデビューした車種ということもあって、近代化にも限界があり、このタイミングで月販販売目標台数は300台までに縮小。

 結局2000年3月、トヨタ「カムリ」のOEM車である「アルティス」が登場すると、その座を譲り終売となりました。

※ ※ ※

 ちなみに車名の由来は、英語で拍手喝采の意味を指す「Applause」で、世界統一ブランドとして売り出されています。

 こうした意欲作でありながら、初期のリコール問題などもあってヒット作には至らなかったアプローズ。

 デビュー当時の評価は決して低くなかっただけに、違った未来も見たかった1台といえるでしょう。

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Writer: 小鮒康一

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。

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