高速道の「植木」地域ごとに異なる!? 地域「自生」品種植栽も! 意外と知らない「高速植栽」の秘密
高速道路沿いに植えられている「植栽」は、むやみに植えられている訳ではありません。地域の特性を生かしつつ、時には郷土の品種を選んでいるといいます。あまり知られていない「高速道路の植栽」について紹介します。
エリアごとに異なる「地域性苗木」とは
高速道路を移動中に沿線を眺めてみると、実に多くの植物が植えられていることに気付きます。
何気なく目にする中央分離帯や施設の植栽ですが、実はきちんと研究されたうえで品種が決められていることを知っていましたか。
高速道路の様々な技術の開発や調査・研究を行う高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)のなかに、「緑化技術センター」という組織があります。
これは1958年、日本道路公団に設立された直営苗圃(びょうぼ)を前身としています。日本初の高速道路が開通するより前のことでした。
高速道路の植栽には、走行時の良好な視界環境の維持や、休憩施設を利用するユーザーに向けてのリフレッシュ効果、周辺環境との緩衝帯の役目などがあります。
しかし、高速道路の中央分離帯や周辺地域の植栽に必要な、規格化された樹木が市場に流通していないことや、必要数が大量であることなどから、これらの課題解決のため組織が設立されたといいます。
緑化技術センターでは、高速道路周辺各地から採取された種子から苗木を生育しています。
1964年に開通した名神高速道路の中央分離帯向け植栽研究を皮切りに、緑化技術センターで生産された苗木は200種に及びます。
一例を挙げると、アオギリ、イヌビワ、ウツギ、クスノキ、ツツジ、ヤマブキなどがあります。
なかには、発芽までの育成が難しい品種や、公共用の緑化樹木として流通していない少数派品種、地域で希少とされ絶滅危惧種に指定されている品種もあります。
また緑化技術センターでは種子の精選、選別を行い、低温で休眠させた後、品種に応じた状況下で貯蔵(低温、保温、密封低温、乾燥)し、環境を整えた施設で発芽させます。
ハウスで苗木になるまで育成してから、植える地域の環境への耐性強化のため外気に慣らし、出荷するまでの工程を行います。
これらの植栽品種は、地域の土地に自然に分布している品種(郷土種)のなかから、特に高速道路事業地周辺地域に多く生育している品種が選ばれます。
個体から種子が採取され、整った設備のなかで苗木に育てられますが、この苗木を「地域性苗木」と呼びます。
地域性苗木は、高速道路の中央分離帯をはじめ、ロードサイドや周辺地域に植えられます。
これにより外部からの別品種流入や遺伝子の撹乱を防止し、高速道路周辺地域の生物多様性の保全が守る効果が得られるといいます。
1996年に初めて地域性苗木が植栽されて以来、これまで80万本が新東名高速道路、新名神高速道路など11路線に植えられています。面積はテニスコート約1万2000面、サッカーフィールド約400面に相当します。
高速道路や周辺地域の植栽によって期待できることは、温室効果ガスの削減や、生物多様性の保全です。
また地域性苗木育成のため、個体から種子採取の作業を地元の人々に協力依頼することで、地域の環境について学ぶ機会も設けられているといいます。
このように高速道路の植栽は、様々な目的のために行われているのです。
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同センターではほかにも、希少種の保全、各種緑化資材の生産や堆肥製造といった生産業務と、高速道路の緑地化に対する様々な課題解決をすすめる研究業務、地域性苗木育成技術の支援、講習を行う交流業務なども行っています。
一方で、高速道路各所に植栽された緑地はそのままという訳にはいかず、定期的な手入れが必要です。
高速道路の管理を行うNEXCOグループでは、植栽の生育に合わせ、時には車線の一部を通行止めにしながら草刈りや芝刈り・伐採作業、防草シート工事、薬剤散布、剪定などの手入れを行っています。
今後も地球温暖化防止につながる取り組みとして、高速道路緑化事業の拡大が期待されています。
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