全長5m超のトヨタ新型「クラウン セダン」シリーズ唯一のFR採用! SUV全盛でも“高級セダン”が必要不可欠なワケ
16代目となるトヨタ「クラウン」は4つのボディタイプを用意しますが、SUVが3車種を占めるなか、伝統の「セダン」も設定されます。SUV全盛のなか、セダンが引き続き登場するのはなぜなのでしょうか。
SUV全盛の今でもクラウンにセダンを設定する理由とは?
16代目となったトヨタ新型「クラウン」には4つのボディタイプが用意されており、まずは「クロスオーバー」が2023年9月に発売されました。
さらに、「スポーツ」「エステート」といったSUV系モデルのほか、クラウンの伝統ともいえる「セダン」もしっかりと残されており、2023年秋に発売される予定です。
昨今はどのメーカーもSUVに力を入れているなか、トヨタが新型クラウンにセダンを用意する理由はどこにあるのでしょうか。
クラウンに限らず、高級モデルはセダン、そしてFR(後輪駆動)が伝統的なパッケージとされており、それはSUV全盛期の現在でも同じです。
室内空間だけで見れば高さが取れるSUVのほうがセダンより優れていて、フロアトンネルが必要なくパワートレインを前方に集約できるFF(前輪駆動)のほうがFRよりも優れています。
高級車として快適な室内空間を実現するならば、スペース的に有利なSUVとFFというパッケージが良いと思えるでしょう。
しかし、エンジンルームや室内、ボンネットと3ボックス形状となっているセダンはボディ剛性が高く、良い乗り心地を実現するほか、騒音や振動の面でもSUVに比べて有利です。
FRレイアウトという点も、走行中の安定性や衝突時の衝撃吸収性がFFレイアウトよりも優れています。
もちろん、技術の進化によりSUVとFFという組み合わせでも、昔のセダンと遜色のない乗り心地や安定性を実現しており、近年高級ブランドで都会的なオンロード志向のSUVが増えてきた理由はここにあるといえるでしょう。
ブランドイメージを損なうことなく、乗り心地と安定性を実現するSUVを作ることができるようになった一方で、基本的なパッケージの壁を超えることはできません。
SUVで高い乗り心地と安定性を実現できるということは、セダンはそれを超えることができるのです。今でも高級車にセダンが用意される理由はここにあるといえます。
トヨタブランドのなかでも高級モデルとして位置するクラウンの全面刷新でクロスオーバーやSUVが登場しても、セダンを用意したのは「高級車=セダン」というイメージを大切にした結果でしょう。
新型クラウンでは、クロスオーバーが最初に開発され、クロスオーバーのデザインの完成度を見て「セダンも作ろう」という流れになったといわれています。
これはクロスオーバーの完成度の高さから、「これまでのセダンのクラウンを超える新たなクラウンを作れる」と確信したからかもしれません。
また、この16代目からクラウンは国内専用車種ではなく、世界で販売されるグローバルモデルとなります。高級車としてブランディングして販売するならば、やはり「セダン×FR」というパッケージは必要不可欠ということでしょう。
現トヨタ自動車社長の佐藤恒治氏は、レクサスインターナショナルプレジデントだったときに、「FRはプレミアムカーの通行手形のようなもの」と語ったとされており、それだけ高級モデルはFRとセダンという組み合わせが海外では絶対的なものなのです。
今回新たに公表された新型クラウン セダンのボディサイズを見ると海外をターゲットにしているのが分かります。全長5030mm×全幅1890mm×全高1470mm、ホイールベースは3000mmと、5mを超える全長や3mのロングホイールベースからしても、サルーンとして海外のモデルたちに勝負してきているのが見て取れます。
パワーユニットはハイブリッドとFCEV(燃料電池車)が用意されているのですが、ティザーサイトでは「FR」と明記されています。なお、新型クラウンシリーズでFRを採用するのはセダンだけで、ほかの3モデルは4WDです。
トヨタの高級ブランドとしてはレクサスがありますが、トヨタ「ハリアー」が海外では「ヴェンザ」という名前で、トヨタブランドから販売されているあたりを見ると、海外市場のトヨタブランドでも高級モデルを展開し「高級車もイケるトヨタ」なブランドイメージを根付かせていきたいところだと感じ取れます。
高級車にも対応できるブランドイメージを作り上げていくには、「セダン×FR」の新型クラウンが絶対条件なのです。
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