実現性アリ!? トヨタが旧車「86レビン」EV化事業に前向き姿勢! メーカー直系「BEVコンバージョン」ビジネスの可能性とは

欧米各社の中には「BEVコンバージョン」をビジネス化している事例も

 気になるのは「お値段」ですが、実はトヨタとしてもベンチマークになる事例がいくつか存在があります。

 そのひとつが、フランスのルノーが2023年1月に発売した、旧車「ルノー4(キャトル)」用のBEVコンバージョンキットです。

「AE86 BEV コンセプト」のリアエンブレム部には、LEVIN(レビン)の「EV」だけエコなグリーンに変更されてあったり、左のグレード表記に本来ある「TWINCAM16V」が「NON CAM 0」になっていたりと、あちこちに遊び心がちりばめられていました[撮影:桃田健史]
「AE86 BEV コンセプト」のリアエンブレム部には、LEVIN(レビン)の「EV」だけエコなグリーンに変更されてあったり、左のグレード表記に本来ある「TWINCAM16V」が「NON CAM 0」になっていたりと、あちこちに遊び心がちりばめられていました[撮影:桃田健史]

 EVコンバージョン専業のR-FITと提携して行うもので、モーターの最大出力は48kW、搭載するバッテリー容量は10.7kWhで、費用は1万1900ユーロ(1ユーロ=143円換算で約170万円)となります。

 このBEVコンバージョンキットは今後「ルノー5(サンク)」など、往年の人気車向けにラインアップされる予定です。

 ルノーでは2024年に新型「サンク」の名でBEVのニューモデルを登場させる予定があるほか、ルノー日産三菱アライアンスに基づき、ルノーが主導するEV開発メーカー「アンペア」が近く稼働することになっており、旧車のEVコンバージョンも含めたルノーとしての総括的なブランド戦略が進む段階であるといえるでしょう。

 他にも、2000年代後半から2010年代にかけて、アメリカでは当時のクライスラー・ダッジがEVコンバージョンを手がた事業があります。

 こちらは、60年代から70年代の「チャレンジャー」や「チャージャー」を対象としたもので、クライスラー・ダッジとしてBEV専用車がなく、またハイブリッド車のラインアップも少なかったことから、自社としての部品共用性は期待できず、BEV専用事業者とのコラボ事業であったため、コストはかなり割高の印象がありました。

 当時、クライスラー・ダッジは、スポーティブランド「SRT」の訴求に力を入れており、BEVコンバージョンもハイパフォーマンスな内容を盛り込もうとしていました。

 こうした自動車メーカー各社のBEVコンバージョン事業を踏まえると、トヨタとしては直近のルノー型のビジネスモデルを参考にしながら、日本市場向け、また日系の旧車人気が高い北米市場向けに、AE86 BEV用キットの正規販売が考えられるのではないでしょうか。

※ ※ ※

 今後トヨタの看板でこうした事業を実際に立ち上げる場合、クルマ全体の保証なども考慮すれば、トヨタディーラーの中でBEVコンバージョンを担う専門事業を立ち上げる、といった流れが予想されます。

 繰り返しになりますが、トヨタ本社によるBEVコンバージョン事業化はあくまで「社内検討中」の段階だといい、2023年3月現在、トヨタが最終的な判断を下したり、正式に事業内容を発表したりしているものではありません。

 しかしAE86を起点として、トヨタの様々な旧車が正規のBEVとして再生されることが、大いに期待されるところです。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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