ホンダが「F1」再参戦を検討!? 「いくつかのチームから声がかかった」HRCが2026年以降のPU供給に言及
2023年2月3日、ホンダとHRCは2026年以降のFIA F1世界選手権(フォーミュラワン)における「PU(パワーユニット)」サプライヤーとして登録したことを発表。2月20日の会見でHRCの渡辺社長は、登録の経緯や今後の展望について語りました。
ホンダが2026年以降のPUサプライヤーとして登録
FIA(世界自動車連盟)は2023年2月3日、レギュレーションを大幅に変更する可能性が高い2026年以降のパワーユニット(PU)サプライヤーとして、ホンダが登録を行ったことを明らかにしています。
これについて、ホンダが2023年2月20日、報道陣向けに実施した「HRC Sakura F1 2023シーズン開幕前オンライン取材会」の中で、HRC(ホンダレーシング)の渡辺 康治 代表取締役社長は「複数のF1チームからコンタクトをもらった」と回答しました。
渡辺社長は、記者の質問に次のように答えています。
まず、「F1そのものが電動化に大きく舵をとっており、これはホンダ全体としての(企業方針である)のカーボンニュートラルの方向性と合致するから」と今回の登録に至った理由について説明。
そして「今後のF1の技術動向やレース全体(のあり方やレギュレーション等)がどうなるのかをしっかり見ていく」と話します。
さらに「(FIAへの)パワーユニットサプライヤー登録の後、複数のF1チームからコンタクトをもらった」ことを認めた上で「いまのところ(ホンダ本体としてのF1)再参戦の結論には至っていない」と回答し、ホンダF1復活について、全面的には否定しませんでした。
時計の針を少し戻すと、ホンダは2020年10月2日、急遽「FIAフォーミュラ・ワン選手権への参戦終了について」と称したオンライン会見を開きました。
この中で、当時のホンダ(本田技研工業)社長の八郷隆弘氏は、「自動車産業界が100年に一度の大変革に直面している」という社会情勢を強調し、その中で開発のリソースを電動化に大きくシフトする必要があるため、F1参戦を終了すると話しています。
これは「F1撤退」ではなく「終了」という表現でした。
その後、2021年シーズンでのホンダ本体としての参戦活動終了後、2022年はイタリアのF1チームであるスクーデリア・アルファタウリと、オーストリアのレッドブルレーシングに対して、ホンダはパワーユニットサプライヤーとして、2025年まで活動することを明らかにしています。
直近のF1パワーユニットの開発状況について、F1パワーユニット責任者の角田哲史氏は今回の会見で、2022年シーズンから2025年シーズン用のパワーユニットは、レギュレーション上、初期の設計要件において最高出力を上げることは許されておらず、主に信頼性向上のための開発を行っていることを明らかにしました。
その上で、ホンダの方針である量産車の電動化シフトに向け、F1パワーユニット開発メンバーのリソースが割かれたが、新規の大きな開発がないため残ったメンバーで十分に対応できていると話しました。
今回の会見をオンラインで視聴して、筆者(桃田健史)は「やはり、ホンダにはF1が必要だ」とホンダという企業のあり方について、改めて認識しました。
というのも、2020年10月のF1参戦終了発表からこれまで、ホンダ本社やホンダに関係する会社の人たちと様々なシーンで意見交換していて、こちらが想定していた以上に「F1にホンダが出ないことの寂しさ」を語る人が多かったのです。
言い方を変えると、2040年にグローバルで新車の100%をEV(電気自動車)またはFCV(燃料電池車)にすると宣言したホンダにとって、皆が同じ方向に進むための「分かりやすい、明確な何か」が必要であり、そのポジションにはやはり、モータースポーツ界の世界最高峰に位置するF1が最適だ、ということでしょう。
そのF1が2026年以降、どのようなステップで電動化を推進するのか。その動向によっては、ホンダがF1復帰を明言することが必要なことなのかもしれないと、ホンダ関係者自身が思い始めているようにも感じます。
現在、EVのF1とも呼ばれるFIAの「フォーミュラe」もありますが、現時点ではレースとしてF1同格、またはF1の後継者とはっきり呼べるとは言い切れない、と見る人が少なくないでしょう。
やはりホンダとして四輪の世界で技術を磨き、エンジニアたちが、そしてホンダに係る全ての人が自分の仕事に確固たる自信も持つには、F1が最も有効なのかもしれません。
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今回の会見では、現在のF1体制を築き、2023年4月でホンダを勇退するHRC常務取締役の浅木 泰昭氏が、ホンダとレースとの関係について、ホンダ創業者の本田宗一郎氏のエピソードを引用し語っていたのが印象的でした。
本田氏は常々「もしホンダがレースをしないと、そこにホンダはない」とし、そのレースでも「四輪ならば世界最高峰のF1でなければならない」と伝えたというのです。
ホンダの電動化の流れと次世代F1の関係の変化について、これからもしっかりとウォッチしていきたいところです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
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