なぜ!? EU連合が2035年「EV以外売らない」宣言! 欧州が電動車シフトに急ぎ出した「理由」とは
欧州連合(EU)は2023年2月14日、現地で販売される全ての新車乗用車及び小型商用車が、2035年までに全てゼロエミッションのEVもしくはFCVになると宣言し、話題を呼びました。欧州でいま起きている事について解説します。
HEVやPHEVもNG!? 厳しすぎるEUの「ゼロエミッション」宣言
2月中旬、「欧州では2035年、事実上ガソリン車だけではなくハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)も新車販売できなくなる!」とのニュースが日本で一気に増えました。
欧州では一体何が起こっているのでしょうか。
これらのニュースは、欧州連合(EU)が2023年2月14日に報道発表したものを受けて、各種報道やSNSでの個人の意見などが広まったからです。
こうした報道やSNSでの情報では、「事実上」という表現が使われる場合が多い印象があります。
ここで注目したいのが、今回の報道の根拠である、欧州連合が公開した新しい法案「FIT for 55: zero CO2 emission for new cars and vans in 2035(以下FIT for 55)」です。
EU議会ではこの法案について投票が行われ、賛成340、反対279、棄権21によって法案は可決されました。
FIT for 55の詳細を知ると「事実上」という一連の報道での書き方の意味が分かります。
FIT for 55の「55」とはCO2排出量の削減率を指す数字です。欧州域内で2030年時点に販売する乗用車について、1990年比でCO2排出量を55%削減することを目指します。
また、VAN(小型商用車)は、2030年に50%削減と定めました。
さらに、2035年には乗用車と小型商用車のそれぞれで1990年比100%削減となります。
この100%削減とは、いわゆるZEV(ゼロエミッションヴィークル)と「事実上、同じ」だと考えられるため、現時点での自動車技術の中では、EV(電気自動車〉またはFCV(燃料電池車〉のいずれかに該当します。
そのため、ガソリン車のみならず、ガソリンエンジンとモーターを融合して使うハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も販売できなくなる、という解釈です。
エンジンを発電機として使う、シリーズハイブリッド車の日産「e-POWER」や、これから市場導入されるロータリーエンジンを発電機として使うマツダのプラグインハイブリッド型シリーズハイブリッド「e-SKYACTIV R-EV」も2035年以降は欧州で新車販売できないことになります。
なお、FIT for 55では、販売台数が乗用車では年間1000台から1万台、また小型商用車で年間1000台から2万2000台と比較的小規模なメーカーについては、2035年末まで規制の適用を考慮する可能性があります。
例えば、スーパーカーブランド「ランボルギーニ」の2022年販売総数は9233台であり、この対象になります。
同社のステファン・ヴィンケルマン社長は2022年11月、筆者の質問に対して「2028年にEVを量産するが、プラグインハイブリッド車を含めて(内燃機関も継続するため)カーボンニュートラル燃料の活用を考えていきたい」と欧州規制を踏まえた発言をしています。
そのほかEUは、年間1000台以下の小規模メーカーについては、2035年以降も対象外になる可能性があるとしているため、富裕層向けの超高級ブランドやスーパーカー/ハイパーカーでは当面の間、内燃機関が存続するでしょう。
あくまでも筆者の私見による発想ですが、例えばマツダの2シータースポーツカー「ロードスター」の開発や製造について、FIT for 55や他の国や地域への電動化規制への法的な対応をしっかりクリアすることを前提に、「ロードスター」事業をマツダ本体から完全に分離させ、台数限定で次世代化していくという道筋も考えられるかもしれません。
マツダは現時点で、今後の新車ロードマップにロードスターが組み込まれていることを対外的に認めています。
しかしマイルドハイブリッド車などで法規制をクリアするという発想ではなく、内燃機関の継続という観点でロードスター事業を見直すことも一考の余地があるように筆者には思えます。
寒冷地では極端に性能の低下する現在の電池が内燃機関並に成れるかがカギですね。駄目でも其れなりに使って性能向上を目指すワケですね。貧乏人には辛い未来ですね。