今後の車中泊は「外に」出る? 流行る!? リアゲート装着「バックドア拡張型テント」が注目されるワケ

昨今車中泊の人気が高まっていますが、そのなかで新たなトレンドとなりそうなのが外付けテントです。どのようなものなのでしょうか。

これからの車中泊キャンプのカタチとは

 ここ数年、車中泊キャンプがブームになっています。
 
 コロナ禍によって、ソーシャルディスタンスが取りやすいキャンプというレジャーが広まったことが要因のひとつです。
 
 キャンプといえば、テントを使うのがベーシックなスタイルですが、なぜ車中泊なのでしょうか。

これからは車中泊+外付けテントが流行るのか?(撮影:山岡和正)
これからは車中泊+外付けテントが流行るのか?(撮影:山岡和正)

 それはテントの設営・撤収の面倒さ。それらに要する作業時間は意外と多く、特に雨天の時は大変です。

 これにアイテムのメンテナンスも加わるわけですから、短時間で楽しみたいという人には実は不向きなレジャーともいえます。

 そんな手間暇を省きたいという人々が目を付けたのが、最初から野外での居住空間が確保されており、クルマを使った車中泊です。

 ワンボックスやミニバン、軽バンを使う車中泊であれば、どこでも自在に動けるうえに、野営地に着いてから準備がほとんど必要ありません。

 キャンピングカーを購入したり、愛車にルーフテントを付けるユーザーの一部は、こうした設営・撤収の手間がイヤだからという理由で「転向」した人であることが取材で分かりました。

 車中泊キャンプをするユーザーを対象にした市場では、近年いくつかのアイテムがヒットしました。

 その代表例が「ポータブル電源」で、ガジェットの充電や照明、電化製品への電力供給を可能に、アウトドアへの快適性を大幅に向上させたアイテムです。

 登場当初は500W程度でしたが、現在は2000Wの大容量もあり、より多くの家電などを長時間使うことができるようになっています。

 そのほか、反発系の車中泊マットレスやルーフテントなどもヒット商品ですが、いま急速に需要が伸びているのが「外付けテント」。これはクルマのボディに取り付けて、日除けや雨除けにするためのものです。

 当初は、キャンピングカーで主流のサイドオーニングという日除けでしたが、高額なこともあって、次の波になったのがカーサイドシェルター。

 ドーム型テントのような日除けを吸盤などでボディサイドに取り付けるもので、雨除けや風除けにもなるアイテムです。

 しかし、両アイテムの共通しているのは、冬場や大雨では居住空間になりづらいということ。

 そのため、現在のメインストリームになりつつあるのが、外付けテントです。

 外付けテントは車両後部に取り付けるものが多く、クルマのリアゲートを利用して設営します。

 完全自立式よりも設営・撤収がラクで、風にも比較的強いという特性もあります。

 そして外付けテントの最大の美点が、車中泊での居住空間を大幅に拡張できるということです。

 車中泊は機動性が高く、非常にイージーですが、弱点は車内以外では外しかくつろぎスペースがないということ。

 タープやサイドシェルター、サイドオーニングを使えば拡張はできますが、寒い時期や大雨のときはなかなか長時間過ごすのが大変です。

 外付けテントは設営・撤収が簡単ながら、ツールームテントを建てるのと同じことに。

 就寝スペースのほかに、食事やくつろぐことができる空間をクルマと一体化させて作ることができます。

 壁の一部を開放しておけば、アウトドア感を十分に楽しむことができますし、閉じれば車内とシームレスなプライベート空間になります。

 キャンプ場で使用しているユーザーが増加しており、その需要の高まりからPIAAなどのカー用品メーカーから、オガワキャンパルといったテントメーカーまでこのジャンルに参入しています。

 ちなみに東京オートサロン2023に出展されていた「プラスステイEX」という外付けテントは、ミニバン・SUVのカステムでお馴染みのアルパインスタイルがリリースしたもので、アルパインスタイルの広報スタッフは次のように語ります。

「弊社は車種別のベッドキットも発売させていただいております。

 さらに、より広々とした快適な車中泊ができるようにという狙いで、リアゲートに付けるタイプのテントを企画させていただきました。

 ツールームで価格も6万6000円ということもあって、お客さまからはご好評いただいております」

 外付けテントに注目が集まっているのには、ほかにも理由もあるようです。埼玉県にあるキャンプ場のオーナーは、次のように語ります。

「実は、車中泊のお客さんとテント泊のお客さんの間で、トラブルが多くなっているんです。

 原因は夜間の騒音。カーAVで音楽を鳴らすということもありますが、多くは夜中にドアの開閉音がうるさいという苦情です。

 車中泊だとトイレに行く際に、どうしてもドアを開け閉めしなければならないのですが、スライドドアやリアゲートは思い切り閉めないとなりませんからね。

 そのせいか分かりませんが、最近は外付けのテントをクルマに付けて、そこから出入りする人が少しずつ増えている気がします」

※ ※ ※

 筆者が取材した外付けテントユーザーのなかには、「居住空間が拡張できるだけでなく、クルマからの出入りで音が出にくくなるから」という理由で付けている人が少なくありませんでした。

 冬でもキャンプをする人が増加している昨今、暖房も利かせられるクルマ外付けテントはまさに極楽アイテム。車中泊派には、これからの注目ギアになりそうです。

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Writer: 山崎友貴

自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。

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