「空飛ぶクルマ」いつ実現可能? 日本は近未来モビリティで世界をリードできるのか?
「空飛ぶクルマ」が未来の乗り物として紹介されることが増えていますが、果たして本当に実現可能なのでしょうか。
ドローンの普及で「空飛ぶクルマ」が一気に現実的に
米・ラスベガスで開催された世界最大級のITや家電の見本市「CES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)2023」では、さまざまな「空飛ぶクルマ」が出展されました。
CESは近年、自動運転やEVの分野で世界に向けたショーケースとして注目されており、そうした流れのなかで、「空飛ぶクルマ」が未来の技術として紹介される機会が増えています。
日本でも、2025年の大阪万博で実際に運航を目指すなど、日本発の空飛ぶクルマ産業を育成する動きがありますが、果たして空飛ぶクルマは近未来モビリティとしてどのように普及していく可能性があるのでしょうか。
そもそも空飛ぶクルマとは何なのでしょうか。
現在のところ、技術的または法的な定義はとくになく、あくまでも俗称です。
飛行する高さで見れば、ドローンとヘリコプターの中間、といった空域をイメージした乗り物とする場合が多いでしょう。
種類としては大きく2種類あり、ドローンやヘリコプターのように垂直に離着陸するもの。これを一般的に、VTOL(ブイトール:ヴァーティカル・テイクオフ・アンド・ランディング・エアクラフト)と呼びます。
もうひとつは、飛行機のような固定翼があり、地上走行では固定翼を折り畳むモデルなどが考案されています。
筆者(桃田健史)は今(2023年)から36年前の1987年に、米・カリフォルニア州内でFAA(米連邦航空局)の自家用双発機操縦免許を取得しており、その後は世界各地で空飛ぶクルマについて、メーカーや起業家、そして各国政府や関係省庁に対して定常的に取材をしてきました。
2000年代までに取材した事例の多くは、初期的なプロトタイプや軍事関連での先行開発構想といった感じで、コストや事業性の観点から、それらの実用化は難しいといわざるを得ませんでしたが、2010年代に入るとドローンの普及によって状況は大きく変化します。
テレビや動画サイトの撮影用、土木関連での測量用や検査用、そして一部では娯楽用としてドローンの普及が一気に進み、高性能な量産ドローンの価格も下がってきました。
また、サービス事業として、グーグル(親会社はアルファベット)やアマゾンなどの大手テック企業もこれまでさまざまなサービス事業の実用化に向けた検討をしています。
そうしたなかで、「人が乗れるドローン」という発想として、電動VTOLの量産を目指すベンチャーが世界各地で生まれました。
近年では、そうした複数の電動モーターを使ったVTOLを空飛ぶクルマと呼ぶことが増えている印象があります。乗員数は1人から、10人前後までといった比較的小型のイメージです。
メーカーとしては、世界各地にさまざまなベンチャーがおり、また、大手企業ではボーイングやエアバスなど航空機メーカーのほか、自動車メーカーではホンダが自社による研究開発を公表していますし、トヨタやステランティスは現時点では投資案件という視点で事業の構築を考えている印象があります。
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