電気の力で魅力アップ! 最上級のトヨタ「ハリアー PHEV」乗り心地スゴい! 25年目の進化とは
現行トヨタ車でトップレベルの快適性を実現
ハリアー PHEVの走りはどうでしょうか。パワートレインはハイブリッドE-Fourをベースに、フロントモーターの出力アップ(88kW→134kW)、バッテリーの大容量化(ニッケル水素→リチウムイオン:18.1kWh)、PCU、DC/DCコンバーターの変更によりシステム出力は306psを発生。
これらのシステムは「RAV4 PHV」と基本的には同じですが、実際に走らせるとより力強く、よりスムーズに感じました。その理由は「静粛性の高さ」で、EVモードはもちろんハイブリッドモードでもエンジンがより遠くで作動しているような印象です。
山崎氏にその印象を伝えると「ガラスとガラスとの間に遮音性の高いフィルムを挟んだアコースティックガラスの採用が効いています」とのことでした。
ちなみにタイヤはオールシーズンタイヤ(ブリヂストン エコピア)に変更されていますが、プレミアムコンフォートタイヤの「レグノ」を履いているのかと思ってしまったくらいロードノイズも抑えられています。ちなみにEV走行航続距離は93km(WLTCモード)なので、自宅に充電器があれば普段はほぼEVとして使うことも可能です。
フットワークはどうでしょう。プラットフォームは形式的には「GA-K」ですが、ハイブリッド仕様よりも200kgの重量増に対応するために、北米専売3列シートSUVの「ハイランダー」用をベースとし、サスペンションのセットアップやEPS制御もPHEV専用に最適化されています。
その印象はハリアーの「重厚」で「シットリ」とした乗り味がより際立った印象です。もう少し具体的にいうと、ステア系もフットワークもハイブリッドに対して穏やかな特性になっています。
ただ、勘違いしてほしくないのはダルになったのではなく、操作に対する正確性はそのままに挙動変化の時間軸がよりゆっくりになったイメージです。ハイブリッド+200kgなのでコーナリング時に重さを感じないといえば嘘になりますが、PHEV化による重心高ダウンや前後バランス改善も相まってロールも抑えられています。
ハンドリング以上に驚いたのは電子制御ダンパー付きかと勘違いしてしまうほどの乗り心地の良さです。ギャップを柔らかにいなすだけなくショックを「スッ」ではなく「ジワーッ」と収束させていて、結果としてバネ上の動きがよりゆったりしており、快適性に関しては現行トヨタラインナップのなかではトップレベルにいます。例えるならば歴代クラウンの、それも「ロイヤル系」の末裔といっても良いくらい優しい乗り味に感じました。
その印象を走りの評価を担当した凄腕技能養成部の片山智之氏に伝えると、「HEVもPHEVも狙いは同じですが、重心高ダウンのメリットを用いて足回り諸元の最適化をおこなったことで、さらなる上質な走り、さらなる上質な乗り心地が実現できたと思っています」と教えてくれました。
※ ※ ※
ハリアー PHEVはトヨタのカーボンニュートラル/電動化戦略に貢献するだけに留まらず、「走りの質」もプラスさせたモデルです。つまり、ハリアーの魅力を電気の力で加速させたモデルといえるでしょう。そして、そのマルチなパフォーマンスはハリアーシリーズのフラッグシップに相応しいキャラクターだと感じました。
価格は620万円とハイブリッドE-Fourに対して116万円高ですが、クリーンエネルギー車(CEV)の補助金制度を活用すれば55万円が支給されるので、差は一気に縮まります。
しかし、長納期問題がクリアになっておらず、「欲しくても買えない」という状況です。ただし、2022年12月から2023年3月にかけて国内向けモデルの増産体制の話も聞いているので、気になっている人は早めに決断することをお勧めします。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。