「ハイブリッド」や「EV」推しの日産が新型ミニバン「セレナ」にあえて「ガソリン車」も残した事情とは
昨今の日産は電動化に力を入れており、EVやハイブリッドのe-POWER専用車を多くラインナップしています。そんななか、新型「セレナ」はe-POWERに加え、通常のガソリンエンジン車を用意しているのですが、なぜe-POWER専用車にならなかったのでしょうか。
新型セレナは異例のガソリン車も設定!?
最近登場した日産車にはハイブリッドの「e-POWER」専用車が多く、「ノート」「ノートオーラ」「キックス」「エクストレイル」はe-POWERのみです。
また、日産車では「リーフ」をはじめ、「アリア」「サクラ」という電気自動車もあり、「電動化」が急速に進んでいます。
日産車に通常のガソリンエンジン車(以下ノーマルエンジン)が設定されない理由について、商品企画担当者は次のようにいいます。
「今の日産車ではe-POWERが人気です。環境対応という意味でもe-POWERと電気自動車に力を入れています。そのため、ノートやエクストレイルはノーマルエンジンを用意していません」
さらに、観点の異なるコメントも聞かれました。
「e-POWERに絞った背景には『選択と集中』もあります。例えばノートに価格を160万円前後に抑えたノーマルエンジン車を用意すると、コストの面からノートe-POWERのような上質なインパネは採用できず、質感の異なるインパネを用意することになります。
そこでパワーユニットをe-POWERに絞り、その代わりに上級のノートオーラを開発しました。ノーマルエンジンの低価格グレードを用意するより、価格の高いノートオーラを加えた方が効率も良いからです」
価格の安いノーマルエンジン車を用意すると販売総数は増えますが、高価格のe-POWERが減る可能性もあります。それなら販売総数を少し下げても、1台当たりの単価が高いe-POWER専用車にして、上級のノートオーラを加えるほうが効率は優れているというわけです。
この考え方に基づき、今の日産の新型車は、スポーツカーの「フェアレディZ」を除くとe-POWER搭載車と電気自動車、軽自動車に二極分化されるのですが、新型「セレナ」は例外です。
新型セレナは1.4リッターエンジンと組み合わせたe-POWER車のほかに、2リッター直列4気筒のノーマルエンジン搭載車も用意しています。なぜセレナは選択と集中の考え方を採用せず、ノーマルエンジンも選べるのでしょうか。
新型セレナの開発者は、「ミニバンのお客さまにはファミリー層が多いです。購入時に家計の負担を重視されるので、価格を抑えられるノーマルエンジン車も必要です。この人気も根強いです」といいます。
新型セレナの主力グレードは、エアロパーツを装着して各種の装備を充実させた「ハイウェイスターV」で、価格(消費税込、以下同様)はe-POWER搭載車になると368万6100円に達します。
過去を振り返ると、2006年に3代目セレナに追加されたハイウェイスターの価格は240万4500円でした。16年前のことですが、当時と現在(データは2021年)で1世帯当たりの所得を比べると、今のほうが若干低いのです。
そうなると現行セレナe-POWERハイウェイスターVの368万6100円は、先進的なハイブリッドと安全装備を搭載しても、3代目セレナハイウェイスターに比べて相当な高価格車になります。価格は約128万円高く、比率に換算すれば1.5倍になるからです。
しかもセレナのようなミニバンは、就学年齢に達した子どもを持つ出費の多い世帯が購入します。2006年に比べて所得は増えていないのに、セレナの価格が約128万円も値上げされると購入しにくくなるのは当然です。
そこで新型セレナでは、326万9200円のノーマルエンジンのハイウェイスターVも設定。e-POWERに比べて価格は41万6900円安く抑えられます。しかしそれでも、2006年に登場した3代目セレナハイウェイスターに比べて約86万円高いです。
このような事情もあり、セレナはエアロパーツを装着しない標準ボディも用意しました。ノーマルエンジンを搭載する価格がもっとも安い標準ボディの「X」は、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能の「プロパイロット」を搭載して価格は276万8700円です。このグレードなら購入しやすく、安全装備の充実も考えると、3代目セレナハイウェイスターに比べて割安とも受け取られます。
やっぱりルキシオンはエルグランドの事実上の後継車種なんだな
アイドリングストップも外して更に安くして欲しい。