大阪ど真ん中の“奇景”「ビル貫通高速」なぜできた? 誕生のウラにあった駆け引きとは
交渉難航のなかで創設された「渡りに舟」の制度
現在のTKPゲートタワービルの場所には、元々2階建てのオフィスがありました。その土地の地権者であるLPガス設備賃貸・不動産賃貸業を営む企業が1980年代半ばにそのオフィスを高層ビルに建て替える計画を立てていたのです。
しかしそれと同時に、当時の阪神高速道路公団がその土地に目をつけて梅田出口の建設を計画していました。
1986年、公団は地権者企業に用地買収を持ちかけましたが、企業側は頑なに提案を拒否。梅田の一等地でもあり、価値が高いこの土地を手放さないという選択は当たり前でもあり、両者の交渉は長く続いたのです。
そして交渉が難航していた1989年、「立体道路制度」が創設されたことで両者の計画が実現可能になり、用地契約が結ばれました。
道路は法律上「道路区域」に指定されており、道路区域は勝手に占有できません。道路を利用する場合は専有許可を取らねばならず、勝手に道路でイベントを開催したり建物を建てたりできません。当たり前のことだと多くの人は思うかもしれませんが、問題は、この道路区域の定義でした。
定義されていた道路区域は、平面だけではなく上下も含まれていたのです。そのため、道路の上空と地下も道路区域であり、そこに許可なく建物を建てることはできません。これは、高速道路の高架下などにも適用されています。
これを解決したのが、立体道路制度です。立体道路制度によって、上下を限定して空間の区分地上権を取得できるようになりました。
これにより、道路の上下に建物を建設できるようになったため、TKPゲートタワービルの5~7階部分の空間の所有権を阪神高速道路が所有するという形でユニークな構造が誕生したのです。
ビルを貫通する高速道路は、立体道路制度によって誕生したユニークな構造ですが、どの都市でもこの構造の高速道路が建設される可能性はあります。
実際に、東京の虎ノ門ヒルズと環二通りのように、地下で建物を貫いているような道路もあるのです。
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梅田出口は、大阪の中心部にあり、多くのクルマが利用する場所でもあります。そのため、大阪ではお馴染みの光景として馴染んでいますが、初めて利用する人にとってはとても驚くような光景でしょう。
気になる人は、一度走行してみてはいかがでしょうか。なお、ビルの中は1車線で急なカーブを描いているため、よそ見にはくれぐれも注意しましょう。
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