もはや「モーターショー」の役割は終わった!? 欧州の異変が日本にも飛び火か 「コロナ禍」だけではない衰退の理由とは
国際モーターショー衰退の流れをつくった「100年に一度の自動車産業変革期」
国際モーターショーの潮流が変わるきっかけとなったのは、毎年1月に米ネバダ州ラスベガスで開催される、ITや家電等の分野で世界最大級の見本市「CES(コンシューマ・エレクトリック・ショー)」です。
2010年代中頃、CESは「CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングなどの新サービス・電動化)」を全面に押し出しました。
CASEはダイムラー(メルセデス・ベンツ)が使い始めた次世代自動車技術を指すキーワードです。ここで「100年に一度の自動車産業変革期」という表現がされ、日本の自動車及び周辺業界でも、そのムーブメントが一気に広がっていきます。
前述したパリモーターショー主催企業の社長と意見交換したのも、CES開催中のラスベガスのホテルでした。
当時フランクフルトショーで、CASEをにらんだ個別イベントを実施したものの、来場者は極めて少ないという状況でした。
主催企業の社長も「パリショーでも同様のイベントを計画しているのだが、CASEに関する日系企業について情報が欲しい」という話だったのです。
その際、彼は「新車情報はすでにネットに溢れかえっており、今後は新車オンライン販売へと移行するだろうから、新車をただ並べるだけのモーターショーは存在意義がなくなる」と不安な顔をのぞかせていました。
また「欧州では若い世代でも、所有から供給(シェアリング)というライフスタイルが広がっており、新車を購入する人は今後、一気に減る可能性がある」とも指摘していました。
そうなれば当然「メーカーにとって従来のモーターショーは不要となるはず」と、モーターショーの未来を案じていたのです。
そんな彼の予想を遥かに超える時代の変化が、不測の事態であるコロナ禍によって急激に加速したのかもしれません。
プレスを介しての情報発信、個人ユーザーへの影響、販売店との折衝など、モーターショー本来の姿がいま、大きく変わってしまったと言えるのではないでしょうか。
日本では2023年に、これまでの東京モーターショーを改め、「JAPAN オールインダストリアルショー」に生まれ変わります。
その中で、クルマやモビリティはどのような位置付けになるのか、グローバルでの自動車産業の動きを踏まえて、今後の動向を見守りたいと思います。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
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