トヨタ「シーポッド」車いすユーザー向けの1人乗り仕様を開発! 超小型EVを活用する理由とは?

優先駐車場でなくても楽に乗り降りできる訳

 こうした課題を解決するため、まずは車両そのものを小さくすることを考えたようですが、超小型車を活用することに行き着きました。

 一般的に、駐車場のマスの幅は2.5mです。車幅が1.29mのシーポッドであれば、優先駐車場でなくても、助手席側のドアをフルオープンにして車いすで乗り降りが可能となります。

車いすユーザーが楽に乗り降りできる
車いすユーザーが楽に乗り降りできる

 そして、車いすの積み込みには、電動スライドシートで持ち上げる方法を考えました。

 運転操作について開発関係者に聞いたところ、「通常のシーポッドはコスト抑制のためパワーステアリングが付いていないが、こちらはパワーステアリングを装着してギア比によって少ない操舵角度で曲がれるようにした」といいます。

 さらに、超小型車(超小型モビリティ)は道路交通法上、最高速度が時速60kmに制限されていますが、高速域で走行しないのならば、手動アクセルを使いながらハンドル操作することが妥当だと考えたそうです。

 また、電子式のバイワイヤ方式も検討したといいますが、これはコストの面から採用していません。

 ブレーキについては電動車による回生ブレーキが効くため、アクセルオフでもかなりスムーズに減速可能。「アクセルオフで完全停止するか、またはクリープ走行するかなど、現在検討中」といいます。

 なお、手動ブレーキは完全に停止するためのものという位置付けです。

 そのほか、車体後部には自転車を積むようなキャリアがあり、そこにトヨタが独自開発した「車いす連結ユニット型・歩行領域EV」が積載可能です。

 移動先でこのユニットを連結すれば、車いすユーザーの活動範囲がより広がることを想定しています。

 さらに、レジャーのみならず、出張や営業などでの雇用を生み出す可能性も視野に入れているといいます。

「協力していただけるさまざまな分野の企業に興味を持っていただき、また車いすユーザーの皆様の声もしっかり聞いて、量産に向けたさらなる開発を進めていく計画」とのことです。

 多様なモビリティが社会全体を元気にする取り組みとして、大いに期待したいと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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