新型「シエンタ」はタクシー車両になる!? 専用車「JPN TAXI」普及の裏でもじわじわ増えるシエンタタクシーの謎
新型「シエンタ」もタクシーに採用される可能性は高い!?
そしてシエンタが好まれるもうひとつの理由としては「ユニバーサルデザインタクシーではない」という意外な面もあるようです。
ユニバーサルデザインタクシーとは、高齢者・障がい者などさまざまな人が利用しやすいバリアフリーのタクシー車両に対し国土交通省が認定する制度のことで、流しの営業でもひと目でわかるよう、車体には認定マークが貼られています。
JPN TAXIも、車いすのユーザーがそのまま乗車できるような造りのユニバーサルデザインタクシーとして開発されているのですが、当初は車いすユーザーの乗降に非常に時間がかかってしまう仕様となっており、不評を買っていたのです。
その後何度か改良が加えられ、乗降速度の改善が試みられてはいるのですが、ユニバーサルデザインタクシーなのに……というクレームを防ぐために、最初からユニバーサルデザインタクシーとなっていないシエンタが選ばれているという、ちょっと残念な理由もあるようです。
このようにコストメリットを中心に、JPN TAXIよりも優れている点が多いように見えるシエンタタクシーではありますが、ひとつ懸念点があるのもまた事実。
それが耐久性の問題です。
JPN TAXIは商用タクシーとして酷使されることを前提に開発されているため、サスペンションやスライドドア、パワートレインなど各部の耐久性を適切に強化したものが使用されています。
対するシエンタはあくまで「乗用車」として開発されており、年間数万kmを走破し、一日何十回もスライドドアを開閉するのは、当初の設計からは想定外となるのです。
そのためJPN TAXIよりも早い段階で各部に痛みが発生し、修理のコストが大幅に発生してしまうという可能性もあるので、その判断が悩ましいと言えるでしょう。
シエンタタクシーの普及が徐々に進んだことで、今後数年の間にタクシー業界内での評価も定まってくるでしょうが、いまのところはまだ未知数なようです。
一方で、2022年8月にフルモデルチェンジしたばかりの新型(3代目)シエンタも、使い勝手の面ではタクシー用途もバッチリこなせそうな雰囲気ではあります。
なかでもタクシーにとって大事な後席(2列目)シートの頭上や足元空間は、JPN TAXIほどではないにせよ、先代に比べると確実に広くなりました。
またトヨタの広報資料には、社内デザイナーが描いたと想われる、新型シエンタのタクシーバージョンのイメージスケッチまで載っていて、さらに想像を膨らませずにはいられません。
先代に対する業界の評価や、フルモデルチェンジを機に価格がやや上昇したことも含め、新型シエンタのタクシー化が実現されるかどうかも見守りたいところです。
Writer: 小鮒康一
1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。
この人の記事は、いつも憶測や妄想がちりばめられているから
スポーツ新聞と同じくらいの感覚で見ておいた方が良いかもね