なぜ軽の「64馬力規制」今も残る? 乗用車/二輪車は既に撤廃 軽EV普及でも「規制」変わらぬ背景とは

なぜ?軽自動車だけ馬力規制が撤廃されない理由

 今後、軽自動車においても電動化はさらに進み、新たな軽EVが登場することは想像に難くありません。

 では、それにともない「ガソリンエンジン車時代の遺物」ともいえる現在の軽自動車の馬力規制が撤廃される可能性はあるのでしょうか。

 もちろん、長い目で見れば、現在の馬力規制は見直しが図られる可能性は十分にあります。しかし、少なくとも今後10年以内には大きな変化はないというのが筆者の見解です。

 そのもっとも大きな理由は、馬力制限を撤廃してしまうと、そもそも軽自動車の存在意義自体を見直す必要があるためです。

 そもそも軽自動車とは、戦後の「国民車構想」に端を発したものであり、来たるべきモータリゼーションの時代に向けて、日本国民に手の届く現実的な移動手段を提供することを目的としたものでした。

 そして登場したのは、一定の範囲内の排気量やボディサイズのクルマを「軽自動車」と規定し、税制優遇などの措置を講じるという政策でした。

 つまり、既成の枠内にあること自体が軽自動車の存在意義であるといえます。

2022年に発売された日産 新型軽EV「サクラ」(左)/三菱 新型軽EV「eKクロスEV」(右)
2022年に発売された日産 新型軽EV「サクラ」(左)/三菱 新型軽EV「eKクロスEV」(右)

 技術的には、軽自動車の規定内である660ccの排気量のエンジンで、64馬力を超えるパワーを出すことは十分可能です。

 同じように、EVに搭載されている電気モーターでも64馬力以上のパワーを発揮することはそれほど難しいことではありません。

 しかし、それをおこなってしまうとコンパクトカーと真っ向から競合することになり、税制優遇措置がある軽自動車が圧倒的に有利となってしまいます。

 前述のとおり、馬力規制をおこなっているのは、自動車メーカーなどで構成される自動車工業会です。

 自動車メーカーのなかには、軽自動車に注力しているものもあれば、軽自動車を開発・生産していないものもあります。

 もし、馬力規制を撤廃し、自由なクルマづくりをおこなうようになれば、軽自動車を開発・生産していない自動車メーカーが不利になってしまいます。

 特定の企業が有利あるいは不利になる施策をすることは、業界団体として適切なことではありません。

 このように、軽自動車における馬力規制は、軽自動車とコンパクトカーの棲み分けを明確にするためにも事実上必要不可欠なものとなっているのが実情です。

 これは「軽自動車」という枠組みに変更がおこなわれない限り、撤廃されることはないと考えられます。
 
※ ※ ※

 一方で、ユーザーのなかには「軽自動車でありながら、よりパワーが欲しい」と考える人は少なくないようです。

 技術的には決して不可能ではないにもかかわらず、それが実現しないのは、ユーザーファーストとはいえませんが、実際には各自動車メーカーの事情もあり、話は簡単ではありません。

 根本的な解決方法は、やはり「軽自動車」という枠組みそのものを見直すことしかなく、新型軽EVが登場したことをきっかけに、建設的な議論がおこなわれることが望まれます。

【画像】これが64馬力規制のきっかけ? 35年前といまの新型軽を写真で比べる!(32枚)

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(左)日産 サクラ/(右)三菱 eKクロスEV

Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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