商業施設の「右折入庫禁止」従わないと違反になる? 看板に法的効力はあるのか?
ショッピングモールなどの商業施設で、駐車場に「右折入庫禁止」を掲げるところがありますが、この表示に従わず進入してしまった場合、違反になるのでしょうか。
商業施設の交通表示に法的効力はある?
ショッピングモールなどの大型商業施設の駐車場は、通常は道路から左折して進入するようになっており、反対車線側からは「右折入庫禁止」や「右折進入禁止」を掲げることが多いです。
右折入庫禁止などの表示や看板は施設が設置したものですが、この指示に従わなかった場合、交通違反などに該当するのでしょうか。

たとえば、夜に表示や看板に気づかず進入してしまった、遠回りになるので指示を無視して進入した場合などは、どのような罰則があるのかも気になるところです。
まず、道路標識には「本標識」と「補助標識」があります。
本標識は、国土交通省や各都道府県などの自治体が設置する「案内標識(目的地までの距離や方向を示すもの)」と「警戒標識(落石への注意喚起や信号機の存在を知らせるもの)」があり、さらに各都道府県の公安委員会が設置する「規制標識(駐車や速度などの規制・禁止・制限を示すもの)」と「指示標識(中央線や横断歩道など)」の4種類に分類されます。
また、本標識の条件指定(日時や区間)を示す補助標識が併設されることもあるようです。
ポイントは「その標識が法的な効力を持っているのか?」という部分ですが、本標識と補助標識の指示に従わない場合は、交通違反になるということです。
それに対して、商業施設に設置されている「右折入庫禁止」や「一時停止」などの表示は本標識や補助標識ではないため、法的な効力はありません。
標識の定義について、都内の教習所で教官としての勤務経験のあるK氏に聞いてみました。
「警察の交通安全課の見解では、あくまで国土交通省や公安委員会が設置した『本標識(補助標識)』が交通違反の取り締まりの対象です。
商業施設内に設置されている表示は、施設側から利用者に対しての『お願い』ベースになっています」
警察が取り締まることができるのは公道がメインで、施設内は私有地扱いとなります。
施設内でのトラブルは、よほどの悪質行為や暴力行為などでない場合は民事介入せずのスタンスをとっており、商業施設の表示を無視しても、すぐに交通違反になるわけではなさそうです。
ただし商業施設が設置している看板などは円滑な利用を促すために設けられており、これに従わない場合、施設側から「営業の妨げになる」と判断され、駐車や利用を断られても文句はいえないということです。
というのも、経済産業省から商業施設に対し「駐車場の出入庫は左折を原則とし、右折待ち渋滞が発生しないように」との要請が指針として示されているからなのだとか。
確かに、右折入庫もOKにしてしまうと、反対車線のクルマが途切れるまで待たねばならず、状況によっては渋滞を招く原因にもなり、そうなると警察も取り締まりを強化せざるを得なくなります。
「営業の妨げ」を防ぐ意味でも、「お願い」ベースとはいいながらも、強制力の高い表示だといえそうです。
法的効力がないなら従う必要ははない。強要罪。