高速道を「戦車が走ってた!?」「SAに戦車が停車」なぜ? SNSで話題となる投稿の正体は…タイヤの戦車?「16式機動戦闘車」とは
戦車といえば道なき道を走破するイメージがありますが、SNS上に「高速道路に戦車走ってた」といった投稿も見受けられます。では、高速道路を走行する戦車とはどのようなものなのでしょうか。
これは戦車? いいえ「16式機動戦闘車」です
SNS上に「高速道路に戦車走ってた」「サービスエリアに戦車居た」なんて投稿を見かけます。
一般道や高速道路で自衛隊のジープやトラックを見かけるのは珍しくありませんが、高さが2.8m、長さ8.4m、全幅2.9m、重さ約26tで堂々の105mm砲を備えた濃緑色の戦闘車輌は目立ちまくりで、あちこちからスマホを向けられるのは無理もないことです。
この車両は「16式機動戦闘車」(以下16式)といい、自衛隊では戦車とは呼んでいませんが、どのような特徴があるのでしょうか。
走行中は高速道路だろうと雨が降っていようと、砲塔から乗員が頭を出して周囲を注意しています。
運転席からの視界は乗用車やトラックと比べても狭く、他車と接触でもしたら相手車はひとたまりもありませんので大変に気を使って走っているため、16式を見かけても写真を取ろうとむやみに接近しないようにして下さい。
16式は車体の上に砲塔は載っていますが、足回りは履帯(いわゆるキャタピラ)ではなくタイヤを履いています。
現在陸上自衛隊には74式、90式、10式戦車と3種類の戦車がありますが、戦車のようで戦車でない16式機動戦闘車はなぜ作られたのでしょうか。
まずはお金の問題です。
10式戦車と16式機動戦闘車を比べると、調達価格も維持費も16式のほうが安いのです。
調達価格は令和4年度で10式は約15億円ですが、16式は約7.1億円。維持費は燃費だけみても機動戦闘車は戦車の8分の1から10分の1程度とされます。履帯式はタイヤ式に比べてメインテナンスの手間もかかります。
日本の戦車は最盛期には約1200両を数えましたが、現在の国際情勢で日本に戦車を持って侵攻できる能力のある国はアメリカだけであり、現行の「防衛計画の大綱(防衛大綱)」では戦車の定数を約300両と4分の1まで減らしています。
一方平成31年度(2019年4月)から令和5年度(2024年3月)までの中期防衛力整備計画(31中期防)では16式は134両調達する計画になっており、コストのかかる戦車を減らして機動戦闘車に置き換えていこうとしているのです。
もっともロシアのウクライナ侵攻を受けて、戦車を見直す動きも出て来ているのは事実です。
もうひとつの理由があちこちで目撃情報が投稿されるような、道路を自走して移動できる即応性の高さです。
タイヤの機動戦闘車はそのまま公道を長距離移動することができるのことが最大のメリットといえます。
16式を装備している部隊は出動命令が出ればすぐにエンジンをかけて駐屯地を出発し、目的地まで自走して任務を遂行する自信があるといいます。
市街地や一般道、高速道を自走移動するのも重要な訓練です。
履帯式の戦車では目的地まで長距離を自走することは道路も自身も壊れてしまい、ほとんど不可能なので輸送車を手配し積載して、駐屯地を出発するまでに相当な時間が掛かります。
自衛隊は憲法ばかり意識しないで道路交通法も守りましょう。高速道路の速度他の車にドラレコで撮られてますよ。