高速道を「戦車が走ってた!?」「SAに戦車が停車」なぜ? SNSで話題となる投稿の正体は…タイヤの戦車?「16式機動戦闘車」とは

戦い方も戦車とは違う? 16式の戦術とは

 戦い方も戦車とは違います。16式の射撃統制装置、敵味方位置情報などを共有できるネットワークなど10式戦車と同じ性能のシステムが搭載されているとされますが、機甲科関係者は戦車と同じ戦い方はできないといい切ります。

「常に位置を変えろ」が16式の戦い方の基本だといい、軽い分装甲が薄いので敵弾に当たらないことが第一です。

 隠れて待伏せ、初弾を命中させてすぐ移動という戦法で、敵の姿が見えなくてもほかの味方からの敵位置情報をリアルタイムで共有できるネットワークによって先制攻撃を掛けやすくなります。走行しながらでも正確な射撃が可能です。

 主砲は74式戦車と同じ105mm砲を装備しており、軽くて軟体のタイヤで接地している車体では反動の大きな主砲の射撃は不安定で不利だとされてきました。

 しかし、16式は射撃統制装置の補正、主砲の反動抑制構造、サスペンション機能のトータルバランスで、あらゆる方向にあらゆる姿勢でどんな走行速度でも射撃可能とされ、日本のクルマとしての技術が凝縮されています。

 現在16式の乗員は74式や90式戦車から転向したほうも多いそうですが、戦車では進めた地形が16式では走破できず、地形の見極め方が違ったり、履帯独特の信地旋回(片方の履帯を停止させて方向転換する)や超信地旋回(左右の履帯を逆回転させてその場で方向転換する)ができなかったりするのが大きな違いだといいます。

 方向転換が素早くできないので、素早く離脱できるように最初から後部を敵に向ける姿勢で待ち伏せる戦法も取られるようです。

 一般に戦車は後部の装甲は薄いので敵には前面を向けるのが普通です。これも戦車との違いです。

海上自衛隊のエアクッション艇から海岸に上陸した16式機動戦闘車。すぐ運べるという即応性も重要だ。(撮影:PANZER編集部)
海上自衛隊のエアクッション艇から海岸に上陸した16式機動戦闘車。すぐ運べるという即応性も重要だ。(撮影:PANZER編集部)

 しかし、16式が戦車なのか、戦車の代わりができるのかというのは大した問題ではなく、意味があるのはすぐに駆けつけられるという即応性の高さです。

 前述のようにアメリカ以外に日本に戦車を持って侵攻できる能力のある国は今のところありません。

 アメリカが日本に武力侵攻してくるとなると別次元の話ですので置きます。外敵が戦車でなくとも軽装な特殊部隊などを日本へ侵入させることを企図した場合、すぐに戦車並みの火力を持つ16式に迎え撃たれることを想定しなければなりません。
 敵は対戦車ミサイルなど重装備を運んでくる必要があり、それが負担となり侵入を決心するハードルを上げるという効果が期待できます。いわゆる「拒否的抑止」です。

 16式が実際に砲火を交えるような事態は抑止力を発揮するという任務に失敗したことになります。兵器とは実際に使われないことを目的とした珍しい工業製品でもあります。

 SNS上に「高速道路に戦車走ってた」「サービスエリアに戦車居た」と投稿されることは日本中どこでも高速道路を通って「16式がすぐに駆け付けるぞ」と存在感を仮想敵にアピールし、抑止力の向上に役立っているかも知れません。

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1件のコメント

  1. 自衛隊は憲法ばかり意識しないで道路交通法も守りましょう。高速道路の速度他の車にドラレコで撮られてますよ。

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