なぜ「旧車を貸し出す」事業は始まった? トヨタ×キントが「憧れ」を提供するに至った理由とは

第1号に「セリカLB」が選ばれたワケは? どんな人が利用している?

 旧車レンタカーの1台目は1975年式の「セリカ・リフトバック2000GT」です。

 そのシルエットは、クーペに対して長く、低く、短いスタイルは、大人のスペシャリティカーといった印象で、当時の若者には憧れの存在だったといいます。

 レンタカーとなるこのモデルは。完全なオリジナル状態ではありません。

 エクステリアは、オーバーフェンダーやフロントスポイラー(当時流はチンスポ)、リアウインドウルーバー、ハヤシ製アルミホイール&ワイドタイヤなど、当時流行ったカスタマイズも施されているほかに、エンジンやトランスミッションは現代流にアップデート済みです。

 では、「なぜセリカ・リフトバック2000GT(1975年)」が最初の1台に選ばれたのでしょうか。 KINTO 布川氏は次のように話しています。

「車種を決めるとき、各々の想いが強くて全く決まりませんでした(笑)。

 そこで旧車のイベントで人気投票をしてみたのですが、面白いくらいバラバラ。憧れのクルマって人それぞれなんですよね。

 そんななか、KINTO社長の小寺信也が『ここで社長の特権を使わせてもらう』ということで、セリカLBになりました。

 完全なノーマルではない理由としては、当時のカスタマイズ事情を感じてもらう……という意味もありますが、随所に小寺の強い想いが反映されています」

 小寺氏の想いにより、最初の旧車レンタカーとなったセリカ・リフトバック2000GT(1975年)ですが、2022年7月現在には「カローラレビン」(1974年)、「ソアラ2800GTリミテッドエディション」(1982年)、「スープラ2.5GT」(1992年)がラインナップされており、2022年8月から10月までの3か月間限定で「初代ソアラ」「TE27レビン」「セリカLB」「70系スープラ」の4台を東京の「GR Garage 東京三鷹」店にてレンタルすることが可能です。

 また、今後の予定として、KINTO 布川氏は「現在準備を進めている最中です。すでに『トヨタスポーツ800(ヨタハチ)』と『スターレット(KP61)』のレストアが完了しており、現在『MR2(AW11)』のレストアが進行中です」と話しており、「KP61スターレット」と「トヨタスポーツ800」は新明工業にて2022年8月22日から貸出開始(予約は8月1日から)となっています。

「特選旧車レンタカー」というサービスでは「初代ソアラ」「セリカLB」「27レビン」「70スープラ」のレンタルが可能となっている
「特選旧車レンタカー」というサービスでは「初代ソアラ」「セリカLB」「27レビン」「70スープラ」のレンタルが可能となっている

 このように過去のトヨタ車をレストアしていくにあたって、年式により苦労する部分は変わるのでしょうか。新明工業 石川氏は次のように述べています。

「大変さは変わりませんね。部品供給に関してはトヨタさんの協力もあって比較的出てきますが、強いていえばキャブレターと電子制御では勝手が違うことですかね。

 デジタルの出始めの部品は修理がきかない物もありますが、そこを何とかするのが我々の仕事です」

 またトヨタの担当者は「弊社でできることは、ヘリテージパーツの充実ですが、継続させるためには利益を出していく必要もあります。慈善事業だけではどこかで淘汰されてしまうので……」と語っています。

※ ※ ※

 古いトヨタ車をレストアしてレンタカーとして貸し出すという「特選旧車レンタカー」ですが、実際にどのような人が利用しているのでしょうか。KINTO 布川氏は次のように話しています。

「一番多いのは40代から50代で、かつて所有していた人が借りていくケースが多いですね。

 なかには『昔父が乗っていたので、プレゼントとして』と娘さんが借りにきたこともあります。

 共通しているのはステアリングを握った瞬間に表情が若返ること、そんな姿を見ていると『やって良かったな』と思います。

 逆に30代は『旧車を買いたいので、まず試してみたい』という人が多いですね。

 また、もしレンタカーを気に入って頂き『欲しい!』ということであれば、もちろん、販売することも可能です」

 クルマ好きのなかには「旧車はいいよ!!」という人はたくさんいますが、それをリアルで提供するというのは、あまりなかったサービスです。

 しかもそれが、メーカーが主導となってやるということはそれなりのビジネス的な規模感が求められ、なかなか展開していきません。

 そうした部分を3社が上手く補うことで旧車コミュニティ「Vintage Club by KINTO」の誕生や、レストアで蘇った名車を「特選旧車レンタカー」として利用出来るのです。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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1件のコメント

  1. 古い車から学んだら創造力の乏しさに絶望でもしてくれるんですか?
    大人になって小学生時代に使った古い教科書を読み返せば記憶はあっても別世界に思えるのは人間が創造力を封印されてバズルの一片になってるからですね。
    乗って読んでつまらない車や本は正直につまらないと言えばよいだけの話で、建前ばかりの読書感想文のような評論しかしないモータジャーナリストに昔の車をレポートしても昔は良かったとしか言わないし、そもそも今をダメにしたのは君ら昔の人間でしょうに?
    一時期ナナハン免許が難関だった時代も同じで今をダメにした奴ほど昔は良かったてヌケヌケと言う始末。

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