「概念変える走り」実現? トヨタ新型「クラウン」はSUV化も走りに自信!? 今から「期待しかない」理由とは
「意のままの走り」と「リラックスできる乗り心地」をどう両立した?
では、新型クラウンはどのような走りなのでしょうか。多くの人が気になっているのは「縦置きFRベース」からAWDを採用するとはいえ「横置きFFベース」でクラウンの走りが実現できているのか、でしょう。
開発チームは「新型は『意のままの走り』と『リラックスできる乗り心地』を高次元で両立できました」と自信を見せます。
上級モデルのパワートレインはフロントに直列2.4リッターターボ+1モーター+ダイレクト6AT(トルコンの代わりにクラッチ機構を採用)、リアにeAXleを採用する「デュアルブーストハイブリッドシステム」です。
エンジンとモーターの間にはクラッチが配置されているので、状況に応じてエンジンとモーターの使い分けや統合も可能です。つまり、THSIIのネガ(=ダイレクト感、レスポンス、伸び感)を解消する、ハイブリッドの新たな選択肢というわけです。
さらにリアの高出力モーターとの協調制御により前後の駆動力配分を走行状況に応じて100:0から20:80まで最適に制御をおこなうことが可能です。要するにFF~AWD~FRの走りを一台で楽しめてしまうというわけです。
プラットフォームは横置きレイアウトからRAV4/ハリアーなどが採用する中型車用(GA-K)がベースだと思われていますが、実は新型クラウン用に新開発された物です。もう少し具体的にいうとフロントがSUV用、リアがセダン用を最適化して活用、サスペンションはフロントがストラット、リアは新開発となるマルチリンク式を採用しています。
さらに四輪操舵(DRS)や車両運動制御システム(VDIM)やACA(アクティブコーナリングアシスト)といった最新の制御技術、さらにはカローラ累計5000万台記念限定車で話題となった除電スタビライジングシートなどを組み合わせるなど、トヨタが現在持っている最新技術をフル活用している事がわかります。
ちなみに豊田章男社長は昨年12月におこなわれた電動化戦略発表会で、筆者の質問に対して「電動化技術を活用すれば、AWDのプラットフォームをひとつ作れば制御次第でFFにもFRにもできます。そんな制御を持ってすれば、モリゾウでもどんなサーキット、どんなラリーコースでも安全に速く走れる事ができます」と答えてくれました。
しかし、それはBEVだけでなくこの新ハイブリッドでも実現できるということを、このシステムが証明しています。
新型クラウンの走りについて聞いたところ、開発責任者の皿田明弘氏は「駆動方式の概念を変える走りを実現できたと思っています」と語っていますが、BEVながらも似た機構を備えるレクサスRZに試乗して驚いた筆者としては、「期待しかない」というのが本音です。
このように、新しいコンセプト、そして新しい走りを備えた16代目、ユーザーは明治維新の如く「文明開化の音」を感じることができるのでしょうか。筆者は間違いなく「YES」だと信じています。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
こんどのクラウンは、大人が子供の衣装をかりて来た様なものだ。