サーキットとストリートを両立できる HKSの新作車高調「ハイパーマックス R」を徹底インプレッション

サーキットを走るクルマのサスペンションというとガチガチのものを想像してしまいますが、そのようなイメージを大きく覆す「足」がHKSから登場しました。同社30年のノウハウが詰まった「HIPERMAX R」の実力は如何に。

クルマの走りを決める重要パーツ「サスペンション」に向き合い30年のHKS

 2022年7月25日から発売が開始されたHKSの車高調整式サスペンション「HIPERMAX R」は、およそ30年に及ぶ同社の足回り開発のノウハウが凝縮されたサーキット向けの製品で、「HIPERMAX IV SP」の後継モデルです。

HKS「ハイパーマックスR」が装着された「SUBARU BRZ」
HKS「ハイパーマックスR」が装着された「SUBARU BRZ」

 サーキット向けの製品ということで、ハンドリングやトラクション性能を大切にしていることはもちろん、それらを達成した上で入力の収まりの良さなども視野に入れたという、欲張りなコンセプトがあるようです。

 このHIPERMAX Rを語る前に触れておきたいのが、昨年登場したストリート向けの足回り(車高調)である「HIPERMAX S」の存在です。この足回りは、HKSとして9年ぶりにリニューアルした製品であり、そこでの進化はかなりのものがありました。すなわち、HIPERMAX Sというベースがあったからこそ、HIPERMAX Rを登場させることができたといっても過言ではないわけです。

 HIPERMAX Sは楽しいだけでも、快適なだけでも終わらない「走り心地」を大切にしようと開発された車高調整式サスペンションです。単筒式ショックアブソーバーをベースにしたこの足回りには、Dual PVS(デュアルプリロードバルブシステム)が搭載されたことが特徴のひとつでした。

 これはバルブシートにテンションを与えるような構造となっており、それが伸び側、縮み側共に搭載されていて、ピストンスピードが低速時であったとしても、しっかりと減衰力を立ち上げられるようにしています。

 一般的な構造の場合、高速域に合わせて減衰力を高めると、低速域では減衰力が強すぎてしなやかな乗り心地が損なわれます。逆に低速域の減衰力ありきでセットすると、高速域では減衰力が足りずにクルマが落ち着かない動きになってしまいます。

 Dual PVSは、低速域の減衰力を高めつつ、高速域はしなやかにというセットが可能になり、だからこそ微小操舵角からしっかりとした手応えを生み出しつつ、しなやかさが際立つような乗り味を実現できているのです。

 今回は改めてその足回りを試すために、「HIPERMAX S」が装着された「GR86」「GRヤリス」「ヴォクシー」の3台に試乗してみました。

HKS「ハイパーマックスS」が装着された「GR86」
HKS「ハイパーマックスS」が装着された「GR86」

 まず乗ったGR86では、しなやかな乗り心地がありつつも、無駄な動きを排除した感覚が得られていました。車高が下がったことによる安定感もなかなかです。その上で走り味も良く、ステアリングをわずかに切り込んだところからしっかりとした手応えが得られ、そこからさらに切り込んでも不満がない応答が得られていました。

 コーナーリング中にある突起も上手く吸収し、例えバンプラバーに触れたとしてもガツンとこないところはさすがのひと言。バンプラバーの材質も改めたという効果がしっかりと発揮されています。これでも十分にサーキットでの走行をこなせそうな雰囲気があり、たまにサーキットを走るくらいであればこの仕様で満足でしょう。普段乗りからサーキットまで走れるオールマイティさがあるといえます。

HKS「ハイパーマックスS」が装着された「GR ヤリス」
HKS「ハイパーマックスS」が装着された「GR ヤリス」

 次に乗ったGRヤリスは、そこから比べるとやや穏やかに感じます。そもそも重心が高く、揺らぎが起きやすいクルマですが、その動きを上手く制御しながらもしなやかさが光っていました。それでいて十分な旋回性能も有しているところはさすがです。ノーマルよりも遥かに快適な乗り味がありつつ、走りを捨てていないところがマルですね。

HKS「ハイパーマックスS」が装着された「VOXY」
HKS「ハイパーマックスS」が装着された「VOXY」

 そしてヴォクシーは、それこそ背の高さが気になるミニバンなのですが、そうであることを忘れさせてくれるほどの安定感がありました。車高が下がり目線も下がったことが、運転中の安心感にも繋がっていると思われます。さらに、フラット感も高くピッチングも出にくいため、同乗者の揺らぎも抑えられることでしょう。

 加えて、これまたしなやかな乗り心地もあるため、これがメーカーの標準装備でも良いのでは? と、ついつい考えてしまいます。ワインディングでも運転に気を遣わずにいられるところもグッド。同乗者を揺らさないように気を遣いながらハンドルを切るというのが、この手のクルマのドライブでは強いられるところですが、この足回りを装着しているとそんな気遣いが無用になるほど運転が楽でした。

【画像】HKS ハイパーマックスRとSが装着されたデモカーを見る!(24枚)

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