ワイドな「車幅」なぜ足かせに? EV充電できる最新「機械式駐車場」が直面する新たな課題とは
充電できる機械式駐車場登場も、新たな課題が浮き彫りに
タワーパーキングなど機械式駐車装置の製造をおこなうIHI運搬機械が2021年12月にリリースし、2022年4月から販売を開始したのが「省電力・EV全台充電システム」です。
同社によると、以前からの機械式駐車装置でも普通充電器を設置してきましたが、これを全台に対応させようとすると膨大な電源容量が必要となります。
また、稼働している機械式駐車装置に後付けとして普通充電器を設置しようとしても、すでに設置されている電源容量では不足してしまうケースも考えられます。
こうした課題を解消したのが、「省電力・EV全台充電システム」で、全台をいくつかのグループに分けて、グループ毎に順番に充電していくという仕組みです。
例えば、全32台の場合、4kVA(交流の場合出力をWではなくVAで示す場合がある)で充電すると128kVAの電気容量が必要ですが、4台ずつ充電すれば16kVAで済む計算になります。
ところが、実際にこのシステムを導入するうえで、新たなる課題が浮上したというのです。
それは、「車体寸法としては機械式駐車装置に収納可能でも、充電ガンや充電ケーブル、または給電(充電)蓋が駐車スペースからはみ出すクルマがある」という課題です。
給電(充電)口の位置はモデルによっても違いますが、車体の横側にある場合、給電(充電)のための蓋(ふた)が車体から大きくはみ出すことがあるのです。
給電(充電)蓋を開けた状態での車両寸法の幅については、メーカーが公開している諸元表には掲載されていないため、IHI運搬機械の担当者は「実際に、各モデルの実車で計測している」といいます。
今後も、新型EVや新型プラグインハイブリッド車が市場に出るたびにこうした計測をおこない、「省電力・EV全台充電システム」を採用した機械式駐車装置に収納できる自動車かどうかのリストを随時更新していくとのことですが、これは「日本固有の課題」ともいいます。
なぜならば、日本では機械式駐車装置が多いのが特徴だからです。
近年、グローバル化の流れもあり、自動車のボディサイズは、とくに車幅がどんどん広がる傾向にあります。
その車幅の広さが、集合住宅など駐車スペースが限られた場所での充電にも影響を与えているのです。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
リーフ:幅1.7mオーバーだから駐車不可
eKクロスEV:高さ1.55オーバーだから駐車不可