日産が新型軽「サクラ」発表!「もはや軽じゃない!」 アリア並質感の上質「軽ハイトEV」を速攻試乗!

航続距離ばかり見てもしょうがない! 日本にあった軽EVとは?

 パワートレインはフロントにモーターを搭載。最高出力は軽自動車枠上限の47kW(64ps)ですが、トルクは軽ターボモデルの約2倍となる195Nmとなっています。

 リチウムイオンバッテリーは20kWhで床下に搭載、航続距離はWLTC複合モードで180kmです。

 パワートレインの印象は195Nmの力強さはもちろんですが、多くの軽自動車で感じるアクセルを踏んだときのモタツキがなく、瞬時にクルマがスッと前に出る感覚が嬉しいです。

 この辺りはモーターの特性のひとつ、応答性の良さによるものですが、車両重量に対してエンジン負荷が大きい軽自動車ではより強く実感します。

 走りの特性は3つのドライブモード(スタンダード/ECO/スポーツ)と1ペダルドライブ(完全停止はしない)が可能なeペダルステップON/OFFの組み合わせで、好みや走行シーンにあわせて選択が可能です。

 ちなみに1ペダルドライブのフィーリングは賛否が分かれますが、サクラのそれは車速によって減速度が変わるため、多くの人が違和感なく上手に使えると思います。

 もちろん万能なのは「ノーマル×eペダルステップON」ですが、個人的には「〇〇〇ccの余裕」と「スーッと転がる軽やかさ」が印象的な「ECO×eペダルステップOFF」と、「超滑らかターボフィール」と「メリハリある減速感」が印象的な「スポーツ×eペダルステップON」がお勧めです。

 シャシ周りは基本デイズと共通ですが、モーター搭載に合わせて新設計されたフロントのメンバーユニットやバッテリー搭載による重量増のためのボディ下部を中心とした補強、3リンクサスペンション(デイズのFFはトーションビーム式、4WDは3リンクだが、それと同じ?)などを採用。

 変更箇所が少ない=日産の軽シリーズは企画当初からBEVを視野に入れた設計だったのでしょう。

 ハンドリングは「トレッド広げました?」と思うくらい安定しており、見ために似合わず軽快な動きです。

 この辺りは軽にしては重いがBEVにしては軽い車両重量が効いているのでしょう。

 ハイト系では苦手なS字のような素早い切り返しが求められるコーナーでは、大舵角を与えてもシッカリとノーズが入るので安心感も非常に高い。

 この辺りは床下にバッテリーを搭載したことによる低重心化とそれに伴う下半身の剛性アップが効いているのでしょう。

 欲をいえば、シャシ側にまだ余力がありそうな感じがするので、タイヤはもう少しいい銘柄(例えばレグノGRレジェーラなど)を奢ってあげてもいいかなと。

 乗り心地に関しては重さを活かしている印象で、シットリした足の動きやアタリの優しさなどは、軽を大きく超えるレベル。

 バネ上のフラット感に関してはフラッグシップのアリアを超えるレベルといっていいです。

 ただ、タイヤの近くに座る後席ではコツコツ感がやや強めに感じる人もいるかも。

 一般的に内燃機関モデルとシャシを共用するBEVの多くはバッテリー搭載で居住空間(とくに上下方向)が犠牲になることが多いですが、サクラはフロア下のトンネルスペースにバッテリーを上手にレイアウト(高さが変えられるユニバーサルスタック)しているため、デイズに対して居住性/積載性は一切犠牲になっていない所は高く評価すべきポイントだと思います。

 先進安全技術は上級車顔負けの充実ぶりで、緊急停止支援付プロパイロットやプロパイロットパーキングなど軽初採用となるアイテムも用意されていますが、今回は未体験。

 運転支援デバイスの優秀性はデイズで体験済みですが、電動パワートレインのほうが制御のしやすさをふくめて相性はいいはずなので、期待していいと思います。

一充電の航続距離(WLTCモード)は180kmだが、軽自動車ユーザーにとっては十分なレベルといえる
一充電の航続距離(WLTCモード)は180kmだが、軽自動車ユーザーにとっては十分なレベルといえる

 開発陣が目指した「軽の概念を超える」という部分に関しては内外装/走りを含めて高いレベルで実現しているのは間違いないです。

 価格は233万3100円から294万300円(国の補助金を活用すると実質購入価格は約178万円から)とデイズの価格(132万7700円から191万5100円)と比べると高めの設定なのですが、「軽のBEV」ではなく「BEVの軽」といえるクルマになっていることを考えれば、個人的にはいうほど非現実的な値段ではないかなと。

 そして、多くの人が気になるのは「180kmの航続距離が実用に足りるのか?」という所でしょう。

 これは前述しましたが、1台ですべてを賄うにはちょっと辛い、複数所有でセカンドカーとして使うのならば実用に足りるレベルだと思っています(統計によると一般家庭の軽自動車1日の平均走行距離の約8割は100km未満というデータがある)。

 この辺りは色々と意見があると思いますが、筆者はBEVを選択する現実解としてはピッタリなモデルです。

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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3件のコメント

  1. 一回で180かぁ、意外に走れないなあ。今乗ってるガソリン車ならその3倍はもつので、まだまだ待ちます。

    • 540km走るとして、週1の給油って考えるとわざわざガソリンスタンドに行かずとも、家でエネルギー補充が出来るEVの方が向いている"という人も"いるかもしれませんね。
      ホンダだかが商用軽バンEVを出すとか言っていた気がしますが、近距離配送用ということで200km前後になる気がします。

  2. 普通に電池パックを1個以上積む時のオプションも考えるべき。軽乗用車で4人乗りでも殆ど4人乗るケースって少なくなっているのでは?。だったら、普通に2人乗りにして1個で180km、2個で360kmとか。360km走れてようやく普通と言えます。2人乗りなら3個まで積めて540kmであればようやくガソリン車並に使えます。自分の軽バンは1給油で400km(市街地:通勤)~600km(長距離:夜間や郊外メイン)走れます。EVの軽が使えないとされるのは、市内でしか使わない距離を想定しているから。田舎じゃ買い物にしか行かない爺さん婆さんにしかメリット無いです。

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