なぜ私有地の「無断駐車」は対処出来ない? 「自力救済」が逆に罰則対象になる? 可能な対応方法とは

自分の駐車場など、私有地での無断駐車は非常に迷惑な行為です。対処法に困ったことがある人もなかにはいるかもしれません。では、このような無断駐車しているクルマを自力で移動させた場合、犯罪に該当してしまうのでしょうか。

私有地の無断駐車を勝手に対処するのは「自力救済禁止の原則」にあてはまる?

 自分の駐車場や私有地に見知らぬクルマが無断駐車している場合、自力でそのクルマを対処することは「自力救済」となり、現在の法律では禁止されています。
 
 では、このように無断で駐車しているクルマに対して、どのような手段で対応するべきものなのでしょうか。

自分の駐車枠に無断で駐車された場合でも進路を塞ぐなど勝手な対処はしてはいけない(画像はイメージ)
自分の駐車枠に無断で駐車された場合でも進路を塞ぐなど勝手な対処はしてはいけない(画像はイメージ)

 公道での無断駐車であれば、道路交通法第44条「車両は道路標識等により停車および駐車が禁止されている道路の部分および次に掲げるその他の道路の部分においては、法令の規定、もしくは警察官の命令により、または危険を防止するため一時停止する場合のほか、停車し、または駐車してはならない」と説明されているとおり、れっきとした法令違反に該当します。

 しかし、道路交通法や刑法では明確に違反として取り締まる法律が存在せず、民法における「不法行為」として対応することになるのがほとんどです。

 民法第709条には不法行為として「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められており、他人の所有している土地を害している行為であると見なされ、賠償する責任があります。

 しかし、賠償する責任はあるとはいえ、実際に賠償するかどうか、あるいはできるかどうかは、クルマの所有者に依存する部分も多く、民法における「不法行為」が認められたからといって、クルマをすぐに動かせるわけではありません。そもそも、裁判にいたるまでに、多くの時間を要してしまうなどの問題もあります。

 では、もし私有地に無断駐車を発見し対処したい場合には、どうすれば良いのでしょうか。

 警察関係者は、私有地での無断駐車に対して「警察に通報される人は多いですが、実際のところ、警察では対応が難しいのが実情です」と話します。

 道路交通法に違反しているという訳でもないため、やはり警察には対応が難しい私有地の無断駐車。

 では、自力でレッカー業者を手配し、クルマを私有地から除外することや、勝手に無断駐車しているクルマを動かしてしまうと、どのような問題が生じるのでしょうか。

 前出の担当者は以下のように話します。

「いくら私有地であるからといって、勝手に他人のクルマを移動させる行為は、器物損壊罪や窃盗罪に該当してしまう可能性もあります。そのため、基本的には、自力での対処はしないほうが良いのではないかと思います」

 器物損壊罪とは、刑法261条にあたり「他人のものを損壊し、または傷害した者は、3年以下の懲役、または30万円以下の罰金、もしくは科料に処する」と定められています。

 また、同様に「窃盗罪」は刑法235条で「他人の財物などを窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または、50万円以下の罰金に処する」と説明されています。

 つまり、勝手に私有地に侵入してきたクルマであるとはいえ、クルマの所有者以外が動かすには少々リスクが多すぎるというのが現在の法律的解釈となるようです。

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